2019 Fiscal Year Research-status Report
動物表象の統合的分析―文学文化・哲学・歴史による学際的研究の基盤構築
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19K00470
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
大原 志麻 静岡大学, 人文社会科学部, 准教授 (80515411)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
安永 愛 静岡大学, 人文社会科学部, 教授 (10313917)
今野 喜和人 静岡大学, 人文社会科学部, 教授 (70195915)
花方 寿行 静岡大学, 人文社会科学部, 教授 (70334951)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 動物表象 / フランス文学 / スペイン史 / 中南米文学 / ヨーロッパ文学 |
Outline of Annual Research Achievements |
動物表象研究を進めていくにあたり、まず令和元年7月に第一回動物表象研究会を発足し、研究の分担・協力体制について確認を行った。8月から9月にかけてスペイン中部および北部、特に図像の多いサンティアゴ巡礼路で資料収集およびフィールドワークを行った。令和2年2月18日 第二回動物表象研究会では、「フランス文学における動物表象研究の動向把握」と題し、まず研究が最も進んでいるフランス文学史における動物表象について概要を理解した。地理的分野の閉じた専門領域で進められてきた研究の限界を克服するため、中南米文学のなかでもインディヘニスモ文学における動物表象から、ヨーロッパと先住民起源の動物表象が混淆・共存し、表象がどのようなものになり得るのかについての分析成果の発表「ホセ・マリア・アルゲダス『ヤワル・フィエスタ』における牡牛の表象」を得た。歴史・哲学・文学の視点から統合的に扱い包括的理解を試みる本研究においては、歴史学の視点から、映像文化の背景となる動物表象の歴史的経緯の一例として、スペイン・バスク地方における異端迫害と魔女狩りにおける山羊の表象の形成と変遷について「中世末から近世にかけての山羊の表象―バスク地方を中心に―」と題した発表を行った。またこれらヨーロッパ・アメリカにおける動物表象について、動物とのアナロジーを用いた人相学の日本への影響についての考察も試みられるなど、メンバー全員による発表と議論を通じて、それぞれの仮説について確認した。また2月29日から3月4日にかけて動物表象研究が進んでいるフランスのパリ国立図書館にて調査した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度前半において第一回目の個別研究会を開催し、後半の第二回研究会については研究分担者全員が発表することができた。またスペイン北部地方の動物表象については、研究代表者による紀要論文の形で発表することができ、今後の研究活動に向けての一定の準備を進めることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
メンバー各人が従来通り個別事例研究を深化させるとともに、近世のバスク地方における山羊の表象が、西洋における遊戯用カード(タロットを含む)における動物表象とどのように接続するかなど、隣接するテーマから双方向的に研究対象を拡大し、情報の拡張を試みる予定である。また、20世紀ペルー文学における動物表象については、ホセ・マリーア・アルゲダスの『ヤワル・フィエスタ』に加えて『上のキツネと下のキツネ』についても関連付けて分析を進める。またフランスのポール・ヴァレリーにおける動物表象について、特に馬・蛇・鳥のイメージを巡って研究を深化させる。これらの研究成果の発表については、静岡大学公開講座に申請を行い、第三回動物表象研究会などで積極的に取り組むとともに、外部の研究連携者との討論の機会を設けるなど仮説の精緻化を試みる作業を進める。
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Causes of Carryover |
研究分担者(今野)が予定していた海外での資料収集を変更し、次年度に繰り越して使用するため。
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