2021 Fiscal Year Research-status Report
動物表象の統合的分析―文学文化・哲学・歴史による学際的研究の基盤構築
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19K00470
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
大原 志麻 静岡大学, 人文社会科学部, 教授 (80515411)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
安永 愛 静岡大学, 人文社会科学部, 教授 (10313917)
今野 喜和人 静岡大学, 人文社会科学部, 名誉教授 (70195915)
花方 寿行 静岡大学, 人文社会科学部, 教授 (70334951)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | ペルー文学 / 動物表象 / ミラン・クンデラ / 北川民次 / タロット / メキシコ壁画運動 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究代表者の大原は、前年度に行われたメキシコとの国際共同シンポジウムに関連して、メキシコ壁画運動の影響を受け、愛知県瀬戸市を中心に壁画文化をもたらした北川民次のバッタの表象について、静岡との関連性を明らかにした。研究分担者の花方は、前年度に行われた国際共同シンポジウムのメキシコ側発表者の原稿を翻訳し、20世紀のペルー文学で先住民の生活や心性を描くことを目指したインディヘニスモ文学の代表者であるホセ・マリーア・アルゲダスの代表的長編小説『ヤワル・フィエスタ』を主たる分析対象とした。文化人類学的および歴史学的研究において論じられてきたアンデス地方の先住民にとっての雄牛やコンドルのイメージと、闘牛におけるその表現を、『ヤワル・フィエスタ』における表象と比較研究し、アルゲダスが先住民文化の知識を前提としながらいかに作品の論理に合わせて動物表象を行っているかを明らかにした。また研究分担者の安永はチェコスロヴァキア生まれ、フランス在住の亡命作家ミラン・クンデラの代表作である『存在の耐えられない軽さ』の最終章「カレーニンの微笑」の記述を中心に、動物表象及び人間中心主義へのラディカルな批判を読み解いた。また、社会学者見田宗介氏へのインタビューを計画し、コロナ終息後に実施の旨、了解をいただいていたが、見田氏は惜しくも逝去され、見田氏の社会学における動物表象についてもテーマが解明すべきテーマとして残っている。3月4日13時半から静岡大学にて研究代表者及び分担者全員出席による研究会を実施した。第一報告は研究分担者の安永により「動物のまなざしの下に ミラン・クンデラ『存在の耐えられない軽さ』再読」という題目での発表があった。また研究分担者の今野による第二報告は「タロットカードにおける動物表象」というタイトルでの発表があり、マルセイユ版を中心に動物を通したアレゴリーについて考察した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度前半においてはフランス文学における動物表象について、後半についてはペルー文学における犬の表象に関しての論文が刊行された。また年度末には研究代表者及び分担者全員参加で研究会を開催し、ミラン・クンデラのなかのカレーニンによる犬の表象、タロットカードにおける動物表象について研究発表があった。タロットは本来ルネサンス期のイタリアで生まれた遊戯用カードだが、18世紀後半以降、図像の中で古代以来の様々な神秘思想が表現されていると誤って見なされるようになった。そこに描かれている複数の動物たちも、伝統的なシンボリズムに新たな意味づけが加えられ、現代に至るまで無数のアダプテーションが加えられている。図像学、絵画史、文学史、思想史との関わりで、その変遷を辿る作業を行った。質の高い議論が交わされ、今後の研究活動に向けての一定の準備を進めることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度については、メンバー全員による研究発表及び論文刊行に加え、児童文学における動物表象についても外部の研究者を招聘してオンラインセミナーを開催する予定である。 2023年度は6月の比較文学会大会において、スペイン、フランス、ラテンアメリカ、日本の動物表象についてそれぞれ個別発表を行う。また静岡大学公開講座を開催し、一般向けにヨーロッパ(スペイン・フランス)、ラテンアメリカ、日本の動物研究をアウトプットする。
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Causes of Carryover |
パンデミックが続いており、海外の文書館での調査や学会参加などのための出張経費を使うことができず、また対面による学外の研究者を招聘した研究会が実施できなかった分の助成金について、今年度は少なくとも国内の研究者を招聘した研究会を実施し、学会での発表を行うことを予定している。
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