2020 Fiscal Year Research-status Report
19世紀のケルト学の発展におけるフランスの貢献に関する研究
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19K00475
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
梁川 英俊 鹿児島大学, 法文教育学域法文学系, 教授 (20210289)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | エルネスト・ルナン / ポール・ブロカ / ダルボア・ド・ジュバンヴィル / ケルト学 / シャルル・ド・ゴール / 「19世紀のケルト人」 / 「ケルト諸人種の詩歌」 / ブルターニュ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の研究計画調書に挙げた3つの目的のうち、ルナンの「ケルト諸人種の詩歌」については昨年度に翻訳と学会発表を終えることができた。本年度はそれを論文にまとめる作業を進める一方で、研究計画調書の残りの2つの目的、すなわち19世紀フランスのケルト学者ダルボア・ド・ジュバンヴィルのケルト研究と人類学者ポール・ブロカのケルト人種論に取り組んだ。その過程で、19世紀における汎ケルト主義の動きを整理する必要が生じたので、その運動のマニュフェストとも言うべき論文であるシャルル・ド・ゴールの「19世紀のケルト人」を翻訳し、その前半部分を解説を付して日本ケルト学会の学会誌『ケルティック・フォーラム』に発表した。また2020年10月に行われた同学会の研究大会において、「ケルト的連帯:大陸と島嶼から見るその歴史的背景」と題したシンポジウムを企画し、ブルターニュの汎ケルト主義の芽生えとそのウェールズとの関係をテーマとした「ブルターニュとケルト的連帯」と題する発表を行い、ド・ゴールの論考も含めて、なぜブルターニュが汎ケルト主義的運動の推進役となったのかを考察した。 そのかたわら、来年度に刊行が予定されている『ケルト学の現在』(仮題)という論文集に収録する論文3本、および書物全体の「総論」の執筆を進めた。この書物は日本ケルト学会のメンバーを執筆者とする論文集であり、筆者は編者の一人である。収録予定の3本の論文では、ブルターニュの口承文化採集とケルト学の関係、19世紀のケルト概念の生成におけるルナンの「ケルト諸人種の詩歌」の役割、さらに汎ケルト主義における最初の連帯の試みとなったブルターニュとウェールズの関係が論じられる予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
コロナ禍で海外調査は中止を余儀なくされたが、その分文献調査と論文執筆に集中することができた。特にケルト学関連の英語文献を広く調査することができ、ブリテン諸島とフランスの各々のケルト学について比較対照する時間を多く持てたことは幸いであった。新たに知ることも多くあったので、今後の研究に生かしたい。海外調査以外では当初の予定を上回る成果を上げることができたが、海外調査ができなかったので、この評価とした。
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Strategy for Future Research Activity |
コロナの状況が改善されれば、ブリテン諸島とフランスにおける文献およびインタビュー調査を行いたい。それが難しければ、ジュバンヴィルとアイルランドの関係に関する文献調査を進め、ブロカの人種論をブリテン諸島の人類学者の業績との比較を交えて検討してみたい。19世紀の人種論は欧米のケルト学者が忌避する傾向があり、日本人が取り組むべき課題であると考えている。時間の余裕があれば、現在のDNA研究によるケルト人研究と19世紀の人種論との関連性も考えてみたい。
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Causes of Carryover |
コロナ禍により予定していた海外調査の中止を余儀なくされ、また国内の学会や研究会等もすべてリモートによる開催となり、旅費の支出が0となったため次年度使用額が生じたが、来年度にコロナの状況が改善されれば、ぜひブリテン諸島とフランスで文献調査およびインタビュー調査を行いたい。それが難しい場合は、さらに関連文献を充実させて研究課題に関する文献調査を進めたい。
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