2021 Fiscal Year Research-status Report
19世紀のケルト学の発展におけるフランスの貢献に関する研究
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19K00475
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
梁川 英俊 鹿児島大学, 法文教育学域法文学系, 教授 (20210289)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ケルト学 / 日本ケルト学会 / フランス考古学 / ブリテン考古学 / ケルト懐疑主義 / ケルト人 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は前年度と同様、新型コロナ・ウイルス感染症の拡大のため、当初予定されていた海外出張等を行うことができなかったので、研究代表者が代表幹事を務める日本ケルト学会の50周年記念論文集に掲載する3本の論考(「ケルト学の理解のために」「グウェンフランのいたブルターニュ」「エルネスト・ルナンの『ケルト諸人種の詩歌』について」)の編集・執筆作業に集中することにした。とりわけ、同書全体の「総論」に当たる「ケルト学の理解のために」の執筆には、考古学、歴史学、言語学、遺伝学等に関する最新の知識・成果を参照することが不可欠であったため、関連する文献を購入し、その読解・分析・整理のために多くの時間を費やした。なお、同論集は今年度中には出版される予定である。 一方、日本ケルト学会の50周年の記念事業として企画された同学会の41回研究大会のシンポジウムでは、全体司会を務めるとともに、同学会の設立と活動について、日本におけるケルト学の発展の歴史とともに振り返る発表(「出版物を通して見る日本ケルト学会の50年」)を行った。同研究大会ではまた、「フランス考古学におけるケルト人」という研究発表も行い、本研究課題に関する考察の一端として、ヨーロッパのケルト考古学におけるフランスの貢献とその特徴について、特にブリテン考古学との相違を中心にまとめた。ブリテン考古学は1990年代にケルト懐疑主義に至り、60年代までは定説となっていた鉄器時代における大陸ヨーロッパからの古代ケルト人の移住を否定する方向に向かっているが、その要因について幾つかの観点からまとめた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
海外渡航が難しい状況が続いており、当初予定されていた海外における調査を行うことはできなかったが、それを補う文献上の研究ができ、コロナ禍は必ずしも研究の妨げとはならなかった。また、当初予定していた論文や研究発表は予定通り行えており、その意味でも順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究で、フランスにおける19世紀のガリアに関する関心がヨーロッパのケルト学の動向に与えた影響の大きさを再認識することになった。次年度は、主として革命後にフランスで盛んになったガリアに関する研究に関して、フランスの歴史学者や考古学者などの著作などを中心にまとめ、それがヨーロッパ全体のケルト学とどのように関係し、またいかなる形でその発展に寄与したのかを検討したいと考えている。加えて、フランス考古学におけるケルト研究を19世紀から年代順に辿り、その最新の成果も含めてまとめてみたいと考えている。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由については、新型コロナ・ウイルス感染症による出入国制限により、予定していた海外渡航ができなかったことが大きかった。また国内の研究集会等も次々とオンライン形式に切り替えられるなか、国内旅費もほとんど使用することなく、大半の支出は書籍等の物品の購入のみとなった。
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