2020 Fiscal Year Research-status Report
Max Kommerell's Works and Life during the Interwar and Watimer Period
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19K00476
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Research Institution | Aichi Prefectural University |
Principal Investigator |
平井 守 愛知県立大学, 外国語学部, 教授 (30305510)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 詩 / 詩論 / 韻律法 / リズム / 自由韻律詩 / 讃歌 / ディテュランボス / ディオニュソス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、マックス・コメレルの戦間期から第2次世界大戦にいたる時期における批評的、学問的業績の再検討を行うことを目的としている。2020年度は2019年度に引き続き、生前出版されたコメレルの最後の著作である『詩についての諸想』の研究をおこない、とりわけその最終章「自由韻律の詩と詩人の神」所収の一連の論考(「ゲーテの自由韻律」、「ノヴァーリス:夜の讃歌」、「ヘルダーリンの自由韻律の讃歌」、「ニーチェのディオニュソス讃歌」、「リルケのドゥイノー悲歌」)の読解と分析に従事した。ゲオルゲ派の影響下で書かれたコメレルの第一著作である『ドイツ古典主義における指導者としての詩人』における詩論との差異、アリストテレスの『自然学』における「リュトモス」の概念、後期ヘルダーリンにおけるリズム論、初期ニーチェにおけるリズム論との関連性、ニーチェ論の中で唯一言及されている古典文献学者カール・ラインハルトの論文「ニーチェのアリアドネの嘆き」の影響、ドイツの伝統的詩学の系譜に属する『ドイツ韻律法の歴史』の著者であるアンドレアス・ホイスラーとの間で交わされた1929年の韻律法をめぐるコメレルの書簡、1930年にフランクフルト大学に提出された古高ドイツ語の頭韻をテーマとするコメレルの教授資格論文「ドイツ英雄詩における頭韻法」との連関、さらには『詩についての諸想』の冒頭に収められた「抒情詩の本質について」および上記の五つの論考間の緊密な相互関係、また、「自由韻律の詩と詩人の神」におけるコメレルの詩論の精髄ともいうべき自由韻律詩における「ディテュランボス的高揚」と「息の切れたとぎれとぎれでつまずきがちなリズム」という「詩的存在の二義牲」の概念、のちのハイデガーの「詩の中の言葉」、「言葉」や、アガンベンの「芸術作品の根源的構造」、『身体の使用』におけるリズムをめぐる哲学的問題系へ与えた影響について考察を深めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究は、マックス・コメレルの戦間期から第2次世界大戦にいたる時期における批評的、学問的業績の再検討と、伝記的研究を行うことを、二つの柱としている。前者の批評的、学問的業績の再検討としては、2020年度は主として、『詩についての諸想』所収の「自由韻律の詩と詩人の神」の章((「ゲーテの自由韻律」「ノヴァーリス:夜の讃歌」「ヘルダーリンの自由韻律の讃歌」「ニーチェのディオニュソス讃歌」「リルケのドゥイノー悲歌」))の読解と分析をおこなった。2020年度中にはその成果を、残念ながら論文のかたちにして発表することはできなかった。おそくとも2021年度中には、「コメレルの詩論(2)―自由韻律の詩と詩人の神―」および「マックス・コメレルにおけるニーチェ」の二論文として発表の予定である。いっぽう後者のコメレルの伝記的研究としては、その準備作業として2019年度にひきつづき2020年度も、Briefe und Aufzeichnungen 1919-1944(hrsg. von Inge Jens)として公刊されている書簡に関して、順次、読解と分析をすすめた。また、コメレルのいくつかの作品の初出媒体(雑誌、年鑑など)を古書として購入し、それが困難だったものについてはその一部を内外の図書館からコピーとして取り寄せでき、2019年度より継続してきた資料収集に一定の成果を上げた。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、2019年度より継続してきたマックス・コメレルの『詩についての諸想』における詩論研究に一定の結論を出した上で、2021年度以降は、研究の焦点を、戦間期から第2次世界大戦期におけるコメレルの他の主要著作である『ジャン・パウル』と『レッシングとアリストテレス』の研究へと移行する。いっぽうで、公刊されている書簡(Briefe und Aufzeichnungen 1919-1944 (hrsg. von Inge Jens))の読解と分析をひきつづきすすめ、さらにはコメレルのフランクフルト大学およびマールブルク大学時代における公刊資料の収集と分析を継続することによって、伝記的研究をさらに前進させる。2021年度に状況が許せば、マールバッハ・ドイツ文学アルヒーフおよびヴュルテンベルク州立図書館シュテファン・ゲオルゲ・アルヒーフでの現地調査をおこない、未公刊の書簡資料ならびに1930年にフランクフルト大学に提出された古高ドイツ語の頭韻をテーマとするコメレルの教授資格論文「ドイツ英雄詩における頭韻法」の資料の調査と分析を行う予定であるが、今年度中の渡独の実現が困難な場合は、計画を2022年度へ延期する。
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Causes of Carryover |
書籍購入の際の余った分。次年度の物品費の一部として使用の予定。
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