2022 Fiscal Year Research-status Report
Max Kommerell's Works and Life during the Interwar and Watimer Period
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19K00476
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Research Institution | Aichi Prefectural University |
Principal Investigator |
平井 守 愛知県立大学, 外国語学部, 教授 (30305510)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 世界文学 / 文献学的認識 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、マックス・コメレルの批評的、学問的業績の再検討を目的としている。2022年度は、1938年にコメレルによって発表された二つのエッセイ「『ドン・キホーテ』における滑稽な人格化」、「閨秀詩人紫式部」をとりあげ、「コメレルと世界文学」という主題で考察をおこなった。ゲーテに端を発する「世界文学」のコンセプトは、現在の文学研究においても、デイヴィッド・ダムロッシュやフランコ・モレッティ などによって刷新が試みられている。この二つのエッセイが発表されたのは、コメレルのゲオルゲ・クライスからの離反の時期にあたっている。第二次世界大戦前夜のこの時期、コメレルはこれまでの一貫した対象であったドイツ古典主義期の文学作品を離れ、いわゆる「世界文学」を自らの批評対象としている。上記二つのエッセイの他にも、イタリアおよびフランスの即興劇をあつかう1940/41年の「コメーディア・デラルテ考」、コルネイユを含むヨーロッパにおけるアリストテレス受容の歴史を対象とする1940年の著作『レッシングとアリストテレス』、さらには、1934/36年に発表されたカルデロンの三つの劇の翻訳を含む『ドイツ的カルデロンへの寄与』(1946)などが相次いで発表される。これらは同時代のすぐれたロマニストであるクルティウスやアウエルバッハ、あるいはヴェルナー・クラウスらの業績とも比較しうるものである。あわせて2022年度は「コメレルと文献学的認識」という主題で、ペーター・ソンディからヴェルナー・ハーマッハーへといたる系譜を取り上げ、コメレルとの比較研究をおこなった。彼ら二人には、コメレルに関する直接的な言及を見いだすことはできないが、人文学一般、あるいは解釈学および文献学と、詩のテクストの理解との関係をめぐるその理論的考察および問題提起は、比較対象としてコメレルの批評的、学問的業績を理解するうえできわめて重要である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
本研究は、マックス・コメレルの戦間期から第2次世界大戦にいたる時期における批評的、学問的業績の再検討と、伝記的研究を行うことを、二本柱としている。前者の批評的、学問的業績の再検討としては、2022年度は主として、「コメレルと世界文学」および「コメレルと文献学的認識」という主題で考察をおこなった。これらに関しては、2023年度以降、その成果を論文として発表の予定である。また、後者のコメレルの伝記的研究としては、2019~2021年度にひきつづき、Briefe und Aufzeichnungen 1919-1944として公刊されているコメレルの書簡に関して読解と分析をすすめた。現在にいたるまで、健康上の理由ならびに新型コロナ感染症の流行の影響のため、2022年度に予定していたドイツにおける現地調査が実現していないが、研究期間の延長が認められたので、2023年度中にはドイツにおける現地調査をおこない、それらもふまえ過去4年間の研究の総括を行う予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度は、「コメレルと世界文学」および「コメレルと文献学的認識」という主題で考察をおこなったが、2023年度以降、その成果を論文として発表の予定である。また、コメレルの主要著作である『ジャン・パウル』および『レッシングとアリストテレス』の読解と分析を進展させる。伝記的研究に関しては、2023年度に、マールバッハ・ドイツ文学アルヒーフおよびヴュルテンベルク州立図書館シュテファン・ゲオルゲ・アルヒーフでの現地調査をおこない、未公刊の書簡資料ならびに調査と分析を行うことを予定している。これらについても、2023年度以降、その成果を論文のかたちで、順次発表をおこないたい。
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Causes of Carryover |
旅費に関しては、健康上の理由および新型コロナウイルス感染症の流行の影響でドイツでの現地調査が困難であったため。研究期間の延長が認められたので、2023年度における使用を予定している。また、物品費は書籍購入の際の余った分であり、2023年度に物品費として使用の予定である。2022年度における予定されていたその他の経費に関しても同様である。
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