2022 Fiscal Year Research-status Report
フランス・ブルターニュ地方における近現代の文芸運動とナショナリズム
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19K00477
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Research Institution | Hiroshima City University |
Principal Investigator |
大場 静枝 広島市立大学, 国際学部, 教授 (60547024)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | ロパルス・エモン / ブルターニュ民族運動 / ブルターニュ国民党 / 分離独立 / 『グワラルン』誌 / 『ブレイス・アタオ』誌 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、19世紀後半から第二次世界大戦終結時までの約100年間において、ナショナリズム運動を行ったブルターニュ出身の作家、特にブルトン語とフランス語の2言語で作品の発表を行った作家たちの言動を調査・研究することで、ブルターニュ地方の民族運動と文芸運動の関係を明らかにし、それによってこの時代のブルターニュ文学の輪郭や特徴を描き出すことを目指している。 2022年度は、2020年度から調査・研究を開始した三人の詩人・作家(ブレイモール、カミーユ・ル・メルシエ・デルム、ロパルス・エモン)のうちブレイモール、カミーユ・ル・メルシエ・デルムに続いて、ロパルス・エモンの研究を終了し、その成果を「ブルトン語文学の創造を希求した作家ロパルス・エモン」にまとめた。本論考は、『抵抗のブルターニュ――言葉と文化を守った人々の闘い』で発表する予定である。 この論考では、主に次の2点を考察した。すなわち、①両大戦間期の分離独立派の活動、活動家たちを集めた『ブレイス・アタオ』誌及び文芸誌『グワラルン』の誕生の背景、及び両誌のマニフェストを通してそのイデオロギーと存在意義を考察すること、②ロパルス・エモンの初期の論説集『ブルターニュを再発見したブルターニュ人』を手がかりに、エモンの言語観と文学観を考察し、彼が国民(民族)文学として創造を希求したブルトン語文学がいかなるものだったのかを解明すること、である さらに最終的には、本科研費研究の成果を『抵抗のブルターニュ――言葉と文化を守った人々の闘い』にまとめることである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2022年度は、2020年度からの研究の遅延により、2021年度後半に今後の研究計画の見直しを行った。その理由は、新型コロナウィルス感染症の世界的な流行によりフランス出張ができなくなったことから、第二次世界大戦中のブルターニュ地方のナショナリズム(分離独立運動、ナチス・ドイツとの協力関係、『グワラルン』の廃刊の経緯、『ブレイス・アタオ』の論説文の分析等)とロパルス・エモンに関する資料や文献の収集・分析が十分にできなかったことにある。その結果、研究対象の時期を、当初予定していた「両大戦間期から第二次世界大戦終結時まで」ではなく、「両大戦間期」に限定して研究を遂行した。 2022年度の前半では、2021年度にやり残した第三段階の研究を、その計画を見直した上で行った。具体的には、「ブルターニュ国民党(PNB)」の誕生と急進派勢力の台頭など歴史的な背景の考察、分離独立派の活動に重要な役割を果たした『ブレイス・アタオ』誌の創刊のマニフェスト及びブルトン語の文芸雑誌『グワラルン』の創刊のマニフェストの検討、『グワラルン』誌の果たした役割とロパルス・エモンの著作『ブルターニュを再発見したブルターニュ人』の分析である。 2022年度の後半では、本研究課題のもう一つの目的である「ブルターニュの民族主義と文学」に関する書物の刊行に向けて執筆を進めた。フランスで資料や文献の収集ができなかったことから、書物の内容を一部変更せざるを得ず、執筆が大幅に遅れることとなった。その結果、2022年度3月の刊行を見送り、2023年度前半での刊行を目指すことになった。
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Strategy for Future Research Activity |
延長期間の2年目である2023年度の研究活動は、主として研究成果の一般への公表を目的としている。現在進行中の著書『抵抗のブルターニュ――言葉と文化を守った人々の闘い』の執筆、校正、編集作業を行う。 また、2020年度~2022年度の研究期間で、新型コロナ感染症の拡大により見送らざるを得なかったフランスでの文献調査を行う。具体的には、第二次世界大戦のドイツ占領下における民族ナショナリズム、この時期に活躍したグワラルン派の作家たちの文芸活動に関する資料の収集を行う。収集した資料をもとに、この時期のブルターニュ地方のナショナリズムをめぐる時代背景、第二次世界大戦中の占領下の民族ナショナリズムと文芸運動との関係等を考察する。 文献調査を遂行するため、可能であれば2023年9月及び2024年2月~3月にフランス国立図書館(パリ)とブルターニュ地方の市立図書館及び大学図書館(ブレスト、レンヌ)に赴いて、文献の閲覧や資料の収集を行う予定である。なお、これまでと同様、Web 上で閲覧が可能な資料について、「研究資料としての使用」の立場を守り、かつ公開機関や関係者への使用の許諾を求め、出典を明示したうえで使用する。これまで築き上げた個人的な信頼関係により取得した資料や文書については、その好意的な協力に感謝し報いる意味でも、取り扱いには十分に留意する。
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Causes of Carryover |
2022年度は、約135万円の残額が生じた。これは以下の2点の理由による。 ①2019年度からの繰越金(2020年3月下旬のフランス出張の中止による)に加え、2020年度から2022年度までに予定していた、フランスでの文献調査・資料収集が、新型コロナウィルス感染症の世界的な流行の影響ですべて中止になったことから、昨年度に引き続き旅費に余剰金が生じた。②上記のフランス出張が中止になったことで、フランスの国公立の図書館における書籍や文献の複写・複製費等の費用として予定していた金額が使われなかった。 2023年度は、新型コロナウィルス感染症の問題も落ち着いたことから、フランスでの文献調査を行い、次年度使用額は文献の複写・複製費用及びフランス出張旅費に充当するとともに、『抵抗のブルターニュ――言葉と文化を守った人々の闘い』の出版助成費に充てる予定である。
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Research Products
(1 results)