2021 Fiscal Year Research-status Report
両大戦間期パリにおける環大西洋文学の形成をめぐる語圏・地域横断的研究
Project/Area Number |
19K00482
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
中村 隆之 早稲田大学, 法学学術院, 准教授 (20510085)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 環大西洋文学 / 両大戦間期パリ / ブラック・モダニズム / ネグリチュード / パン・アフリカニズム |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は「環大西洋文学」(地域、言語を横断するアフリカ系文学の運動を動態的に捉えようとする概念)の観点からフランス語圏、英語圏にわたる両大戦間期 にわたる非ヨーロッパ系文学の形成プロセスを総合的に解明することを目的とし、2019年度から着手している。
2021年度は、2020年度に引き続き、世界的な感染症予防対策のもと、当初計画していた海外渡航を実施することが叶わなかったものの、新型コロナウィルスの感染長期化は予期できたため、2020年度に取り組んできた資料読解、関連する翻訳作業、論文執筆に注力した。
資料読解については1920年代の国際共産主義運動と黒人問題に関する研究書や当時の原典を集中的に読み、これに基づいた論文を執筆した。この論文をふくめ、本研究課題に即してこれまでに刊行した論文および未刊行原稿をまとめて、本研究課題の主要成果として単著を2022年度中に日本語で刊行する予定でいる。上記の国際共産主義運動と黒人問題をめぐる論文も同書の一章として準備している。また2021年度中に、ネグリチュード運動を中核とするアフリカ文学史を論じたAlain Mabanckou, Huit lecons sur l'Afriqueをアラン・マバンク『アフリカ文学講義』としてみすず書房より大学院生の福島亮氏との共訳で出版した。またグリッサンと奴隷制の記憶をめぐるフランス語の論文がその一章をなすL'Atlantique, machine a reves ou cauchemar sans treve ?がEditions La Gesteより刊行された。ほかに本研究の成果であるハーレム・ルネサンスをめぐる論文が一章をなす『ハーレム・ルネサンス』および解説を担当したオレリア・ミシェル『黒人と白人の世界史』が明石書店より刊行された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「研究実績の概要」にあるとおり、本研究課題の直接的な研究成果、および、本研究課題から派生した研究成果を一定数刊行できたことからそのように判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題は2022年度が最終年度にあたる。主要な目標は「研究実績の概要」に記したように著作を2022年度中に刊行することである。また関連する研究成果としてプレザンス・アフリケーヌをめぐる共編著を準備しており、これも併せて進めていく。このように最終年度の推進方策は、本研究課題の成果を着実に国内外に問うていくことにある。
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Causes of Carryover |
2020年度、21年度と海外渡航計画が取りやめになったことにより次年度使用額が生じた。22年度は繰越金を夏に計画している海外渡航に用いるほか、著作刊行のための専門校閲や今年度に海外から来日予定のアフリカ系作家の招聘企画において使用するなどを予定している。
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