2022 Fiscal Year Annual Research Report
両大戦間期パリにおける環大西洋文学の形成をめぐる語圏・地域横断的研究
Project/Area Number |
19K00482
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
中村 隆之 早稲田大学, 法学学術院, 准教授 (20510085)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 環大西洋文学 / 両大戦間期パリ / ブラック・モダニズム / ネグリチュード / パン・アフリカニズム / ハイチ文学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は「環大西洋文学」(地域、言語を横断するアフリカ系文学の運動を動態的に捉えようとする概念)の観点からフランス語圏、英語圏にわたる両大戦間期 にわたる非ヨーロッパ系文学の形成プロセスを総合的に解明することを目的とし、2019年度から着手しており、2022年度が最終年度にあたる。
2022年度は、8月にフランスに渡航し、長年取り組んでいるカリブ海の作家・思想家エドゥアール・グリッサンをめぐるスリジーにおける学術交流に参加し、報告をおこなうなど、世界的な感染症予防対策で難しくなっていた海外での研究交流を実施できたことが大きい。
研究成果としては、本研究課題の前身にあたる課題から準備をしてきたエドゥアール・グリッサンによる雑誌『アコマ』をめぐるフランス語論文を掲載することができた。また、2022年8月に本研究期間に実施した調査・研究に基づくエッセイ『第二世界のカルトグラフィ』を刊行した。本書は社会的発信に重きをおく著作である。12月には『環大西洋政治詩学』を上梓することができた。これは本研究課題期間中に執筆した研究論文のみならず、これまでに公表してきた論文を「環大西洋」の観点から編んだ論集であり、本研究課題の主要な成果刊行物である。本書には2021年度に資料読解に注力したフランスにおける国際共産主義運動と黒人問題をめぐる論考(書き下ろし)を掲載している。さらに『思想』2023年3月号掲載の論文は、『ニグロ・ワーカー』という国際共産主義運動における黒人労働組合活動結成をつうじた階級闘争のための機関誌を対象にした。さらに『岩波講座 世界歴史』にネグリチュード運動をめぐる論考を寄せた。このように2022年度は、これまでの研究の成果を活字にすることで、本研究の意義を社会的に発信するとともに、研究に還元することができたと考えている。
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