2021 Fiscal Year Annual Research Report
Study of the missing part of the medieval occitan manuscripts
Project/Area Number |
19K00483
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
瀬戸 直彦 早稲田大学, 文学学術院, 教授 (30206643)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | トルバドゥール / 写本 / テクストの欠損 / クレチヤン・ド・トロワ / ギラウト・リキエル / イヴァンまたは獅子の騎士 |
Outline of Annual Research Achievements |
「フランス中世写本における欠損部分の研究」という今回の課題につき,最終年度にあたる2021年度は以下の作業を行った。
1)南仏語による韻文物語『フラメンカ』の欠損部分については,引き続きテクストの解釈を続ける中で考察をおこなった。2)13世紀後半,最後のトルバドゥールと呼ばれるギラウト・リキエルの作品,とくにそのパストゥレル6篇について,その「メタ文脈」を探ってみた。ひとつひとつが完結しながら,1260年から1282年にかけての作品の過程の中で,筋が進展してゆくのである。欠損がおそらくないであろうと思われるこの作者のコーパスを,逆に欠損のない例として参考にしてみた。作品は抒情詩形式の韻文作品89篇,書簡韻文詩15編合わせて一万行におよび,CとRという2写本で伝わっている。それらが作者自身の編纂(選定・校閲)により収録された,と前者の写本の冒頭朱文字に記されている。その前書きについて考察を行った。
そして新たな視点として,3)フランス中世最大の物語作家といわれるクレチヤン・ド・トロワの韻文物語『イヴァンまたは獅子の騎士』(北仏語による作品で1073年頃成立)のP写本における写本挿画に見られる欠損について研究を進めた。私が問題にした欠損は,主人公イヴァンが狂気の果てに森を全裸でさまよった末,侍女に回復の軟膏を塗られている姿を描いた挿画である。そこではイヴァンの体の一部分が削り取られているように見える。後世による故意の抹消と思われ,ここにあらたに羞恥心による欠損という問題が浮かび上がった。
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Research Products
(2 results)