2019 Fiscal Year Research-status Report
フランス第三共和政期の非党派・非宗教的プロレタリア文学にみる共同体の想像圏
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19K00485
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Research Institution | Nanzan University |
Principal Investigator |
吉澤 英樹 南山大学, 外国語学部, 教授 (30648415)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 非政治的プロレタリア / 文学の民主主義 / 共和国市民の文学 / 真正さ / インターナショナリズム / 新しい人間観 / 1930年代 / ポピュリズム |
Outline of Annual Research Achievements |
三年の研究期間の初年に当たる令和年度は、1)本研究のコーパスである1920年代から30年代にかけてフランスの非政治的プロレタリア文学におけるメルクマールとなるテクストの選定・精読、2)それら非政治的プロレタリア文学者たちが享受してきた第三共和制度における教育制度との対照を予定していた。1)に関しては美術史家ミシェル・ラゴンの『フランス・プロレタリア文学史』の中心に据えられ、自らプロレタリア文学運動を立ち上げた作家アンリ・プーライユの著作と活動に焦点を当てた研究を進めた。具体的には1920年代にプーライユによって書かれた小説群ならびに1930年に発表されたマニフェストである『文学の新時代』さらには1931年から1年間刊行されたプロレタリア文学運動の機関紙『新時代」の精読を行った。この研究成果の一端として2019年12月に開催された国際シンポジウムにおいて、アンドレ・マルローとプーライユの関係に焦点を当て1930年代にプーライユが着想したプロレタリア文学の射程にについての研究発表を行った。さらにその後プーライユのグループと同時期に同様に民衆文学を新しい時代の文学の旗印に据えたアンドレ・テリーヴとレオン・ルモニエが旗揚げをしたポピュリズム文学運動における「民衆」概念の再検討を試み、プーライユの「プロレタリア概念の射程を歴史に位置付け側面的に考察する論文を執筆した。これは2020年6月に刊行予定である。2)に関してはプーライユ自身孤児で第三共和政下の教育を十分に受けられない一方で、独学によって教養を身につけたという経験から普通教育の効果に対しては疑念を持っているところがあるため、プーライユの作品のテクスチャーと中等教育の教科書などのテクスチャーの相同性をテキストマイニングなどの手法で検討することの有効性に対して疑念が出てきた。それゆえこちらの方向については研究方法を再検討中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2つの理由があげられる。一つ目は上記の理由から教育学者と協働したテクストマイニングの手法を用いた研究に関して方法論を再検討する必要が出てきたこと、二つ目はプーライユの活動に関して、2020年3月にフランスのアーカイヴ における資料収集をするための出張を予定していたが、新型コロナウイルスの世界的拡大の影響でキャンセルせざるをえなかったことが挙げられる、これによって、資料収集に大きな遅れが生じていること、またフランスの研究者を訪問し、共同研究の打ち合わせをする機会が失われ、研究に遅れが生じている。
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Strategy for Future Research Activity |
新型コロナウイルスの収束が見通せない現在、現地のアーカイヴ等を訪問する資料収集は困難が予想されるため、インターネット上で公開されているオンライン資料やオンライン書店からの書籍。資料の購入の比重を高めることによって、在宅で可能な研究方法を模索したい。また他の研究者との連絡や討議もインターネットツールを使用して進めていく態勢を整えたい。
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Causes of Carryover |
今年度は前項の理由によりテキスト・マイニング用の機材購入を控えたこと、新型コロナウィルスの影響により3月に予定していた資料収集のための海外出張がキャンセリュになっったことが主な原因である。テキストマイニング用の機材は、コーパスが再確定した段階で購入したい。またコロナウィルスの状況が収束した場合は資料収集を再開するためにも予算使用したい。それが不可能の場合は、資料およびオンラインツールを利用した研究を進めるために必要な機材の購入などに充てる予定である。
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