2021 Fiscal Year Research-status Report
フランス第三共和政期の非党派・非宗教的プロレタリア文学にみる共同体の想像圏
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19K00485
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Research Institution | Nanzan University |
Principal Investigator |
吉澤 英樹 南山大学, 外国語学部, 教授 (30648415)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 文学の社会的機能 / サンディカリスト / ネオユマニスム / 狩猟権力 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和3年度はこれまでに述べた状況により、当初の計画に沿って研究を進めることができなかったため、30年代の非政治的プロレタリア文学の周辺やそこに至る系譜を入手可能な文献によって解明する作業を行なった。その射程において以下の三点の作業を行なった。1)プロレタリアの系譜として社会から疎外される人間とそれを生み出したメカニズムを西洋思想史の観点から考察を試みたグレゴワール・シャマユーの『人間狩り』(2010年刊)を共訳で刊行した。その中で第5章 「黒人狩り」第6章「 狩る者と狩られる者の弁証法」第7章「貧民狩り」第8章「 警察による狩り」を担当した。非西洋人とプロレタリアの西洋社会における位置付けを西洋哲学やキリスト教思想に内在する思考から派生したものとして捉える視点は、30年代のインターナショナリズムと人間像の更新の理解に大きな示唆を与えるものとなった。二点目はその文脈から、アンリ・プーライユの『文学の新時代』(1930)における「新しい人間」の考察を共編著論集において発表し、その延長線上に美術評論家であるヴァルデマール・ジョルジュ「ネオユマニスム」(1934) について読解を試みた内容を「1930年代ポストモダン研究会(仮称)」で発表した。三点目は、現在進行形の作業として、非政治的プロレタリア文学の社会における機能を第三共和政初期である19世紀から20世紀の転換期に発表されたベルナール・ラザールやジョルジュ・ソレルによる文学の社会的機能についての論考を読み解きながら、ゾラの自然主義文学とは対立する系譜として30年代にまで至る文学史の流れを再構成する作業を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度も新型コロナウイルスの世界的拡大が収束を見せることがなく、フランスのアーカイヴ等における一次資料収集のための海外出張を控えたこと、これによって引き続き基礎研究の部分に欠落が生じた状態になっている。共同研究についても対面やオンラインにおける試みを実践しながら、連携のあり方を模索している状態が続いているため、「やや遅れている」とした。
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Strategy for Future Research Activity |
コロナ禍の中で研究期間を延長させていただいたため、これまで叶わなかった海外のアーカイヴなどでの文献調査を行ない、出来る限り当初の計画に沿う形での研究を進めながら、その取りまとめの方向を模索する。共同研究に関しての進捗は捗々しくはないこともあり、少なくとも個人研究のレベルでの当該研究の成果を形にして世に問うことを目指していきたい。
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Causes of Carryover |
コロナ禍による研究計画遂行の遅延のため。具体的には資料調査のための自身の海外出張、研究者の招聘など共同研究の推進のために計上する予定であった予算が執行できなかったことによる。次年度は当初の計画に沿う形での執行、文献収集や研究発表のための出張費や研究成果の取りまとめのために使用を試みたい。
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