2021 Fiscal Year Research-status Report
Reconsider the Concept of the "Classic" in German Literature
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19K00492
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
大宮 勘一郎 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 教授 (40233267)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ドイツ文学 / 近代文学 / 古典 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和3年度は、「古典」概念の検討を三つの方向から行なった。一つはドイツ古典主義成立期のメディア状況を考察したフリードリヒ・キットラーの大著『書き取りシステム 1800・1900』の翻訳刊行である。本書の理論的骨格は、ドイツの「古典」概念の理想化と空無化を歴史的に捉える視座を与えるものであり、本書の内容の綿密な検討は本研究プロジェクトにとって重要な作業となった。そのさらなる成果として、著者キットラーに対して報告者が行ったインタビューの反訳・翻訳と刊行を計画している。第二に、ドイツ・ハーゲン大学主催のシンポジウム「供犠の文化史的考察」に、基調報告者としてリモート参加した。報告講演において、古代的な「供犠」のメカニズムがドイツ古典主義文芸において、いかに受容され、それが19世紀にどのような変容を被ったかを考察した。供犠概念の成立と変化は、「古典」概念の変容と軌を一にする現象であり、その変化に自覚的に古代悲劇作品の換骨奪胎を行なった20世紀初頭のオーストリアの詩人・劇作家ホーフマンスタールの作品分析を盛り込み、議論に一石を投じた。この成果は、令和4年度中に論集として刊行される予定である。さらに第三に、言語学系の研究者グループと共同で研究を行なった成果として論文集『ノモスとしての言語』の責任編集者をつとめ、巻頭論文として近代語における「国民言語=国語」という「理念」に関する論考を掲載し、令和4年5月に刊行された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
疫病蔓延の影響が徐々に薄れ、海外との研究協力が従来に比べて盛んになりつつあることと、大学施設の開放が進み、研究環境上の支障が除かれたことによる。
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Strategy for Future Research Activity |
プロジェクト最終年度として、短期のドイツ研究滞在を計画している。ベルリン自由大学から客員教授としての招聘を得ており、現地の研究者との間で緊密な議論を交わし、シンポジウム、ワークショップへの参加を予定している。そのうえで、本研究プロジェクトの成果をモノグラフィーとして刊行する予定である。
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Causes of Carryover |
昨年度は、疫病流行の影響が残り、国際学会への対面参加が叶わず、また、資料収集のための海外渡航もできなかったため。 今年度には研究滞在と海外開催のシンポジウム出席を予定しており、消化される見込みである。
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Research Products
(4 results)