2019 Fiscal Year Research-status Report
「顔」の表象からみる詩的言語と近代化の関係ー仏サンボリスムと日本近代詩比較研究
Project/Area Number |
19K00500
|
Research Institution | Gunma Prefectural Women's University |
Principal Investigator |
井村 まなみ 群馬県立女子大学, 文学部, 教授 (60315695)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | フランス象徴主義 / 日本近代詩 / 顔 / 写真 / 肖像 / 近代化 / 詩的言語 / 表象 |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年9月7日~9月21日フランス国立図書館本館にて関連文献の閲覧と複写、分館(site Richelieu)にて、写真関係の資料閲覧と複写を行った。調査の結果は今後の研究に活かす予定である。 本研究の成果は、《 Visage de Rimbaud, visage chez Rimbaud 》, Steve Murphy (dir.), Rimbaud, Verlaine et zut. A la memoire de Jean-Jacques Lefrere, (Garnier, 2019年, p. 317-336. )及び「朔太郎の肖像、『月に吠える』のなかの「顔」」(萩原朔太郎会報『SAKU』第84号、新装第5号、2019年10月発行、p. 81-96.)に、査読と推敲を経て論文として発表した。 前者を所収するのは、ロートレアモンの写真を発表したことで知られるジャン=ジャック・ルフレールの追悼論文集であり、35名の執筆者が寄稿、査読付きである。2010年ルフレールが公表したランボーの写真が話題を呼んだことを出発点に、第一部で詩人の顔写真と詩の関係を考察、第二部ではランボーが作品のなかで顔をどう扱っていたかを論じるが、ヴェルレーヌ、ボードレールとの比較も試みた。 後者は、詩人の顔写真の伝播と詩人による「顔」の表象という同一のテーマで、萩原朔太郎を論じたものであり、本研究の課題である「フランス象徴主義と日本近代詩の比較研究」に相当する。顔写真の普及という近代化の一指標のもとでの両詩人の比較は妥当である。前半で、教科書に掲載されている作者の顔写真、文学者の肖像写真の始まり、「アサヒカメラ」の興隆を扱い、後半では朔太郎が作品のなかでどのように「顔」を表しているかを検証しているが、さらに先行研究で指摘されている朔太郎とボードレールの比較に新たな一面を加えることに成功した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予定通りに論考を発表、調査研究は進んでいるが、2月以降の感染症拡大防止対策で図書館や美術館の閉館が続き、予定していた閲覧や企画展見学が実行できずにいる。
|
Strategy for Future Research Activity |
本来であれば、8月に渡仏、フランス国立図書館で調査を続ける予定であったが、感染症拡大のため、今年度は後半に実行、あるいは中止となる。渡仏しないで行うことのできる調査方法を模索するとともに、上記研究実績の過程で見出した新たな側面を重点的に掘り下げ、その成果を所属研究機関の紀要に投稿、また上記研究実績の延長にある問題については、分野横断的な発表媒体への投稿を準備する予定である。
|
Causes of Carryover |
予定していたより旅費実費が安価であったためである。残額は旅費等の必要経費に使う予定である。
|