2021 Fiscal Year Research-status Report
「顔」の表象からみる詩的言語と近代化の関係ー仏サンボリスムと日本近代詩比較研究
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19K00500
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Research Institution | Gunma Prefectural Women's University |
Principal Investigator |
井村 まなみ 群馬県立女子大学, 文学部, 教授 (60315695)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 肖像 / 近代化 / 写真 / 顔 / フランス象徴主義 / 詩的言語 / 日本近代詩 |
Outline of Annual Research Achievements |
当初の実施計画では、「フランス象徴主義」「日本近代詩」と「肖像」「顔」「写真」の関係を追究する予定であったが、感染症拡大予防のため渡仏による文献調査が不可能となったので、国内文献調査で実行できる形に修正して進めた。 フランス象徴主義の詩作品に隣接する、同時代の小説作品について、2020年度に引き続きフロベールの作品に於ける「肖像」について考察、「『サランボー』に於ける<肖像>の問題―集団と個人の表象―」として『群馬県立女子大学紀要』第43号、p.1‐13(2022年2月)に発表した。主要登場人物の「身体」や「衣裳」を描写する「視線」について興味深い分析を得たと考えている。次いで『ボヴァリー夫人』と『感情教育』に於ける女性像と「肖像画」及び「肖像」との関連について、≪Femmes et "portrait" dans Madame Bovary et L'Education sentimentale≫としてまとめ、 Melanges Steve Murphy (Judith Wulf編)に投稿、受理された。フロベールの作品と「写真」の関係については既に多くの研究が為されているが、本論考は「肖像」「肖像画」に焦点を絞ったことで、次の点で貢献したと考えている。『感情教育』の一節に着目し、『悪の華』の一詩篇で取り上げられる「額縁」と話者の視点と比較、両者の相同性について言及、小説家と詩人の新たな共通性を提示できた点、小説のなかの女性たちが「肖像」から抜け出す契機が設けられていることを指摘できた点である。論文集は2022年度に出版社Garnierより刊行予定である。 更に、2022年1月Seth Whiddenより依頼を受け、Rimbaud et Verlaine,≪devoir a chercher≫, A la memoire de Yann Fremyへの投稿準備を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
感染症罹患予防のため、移動を制限するとともに、人の密集する調査機関、美術館、記念館の見学を回避せざるを得なかったため。主に所属研究機関で実行できる研究となった。
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Strategy for Future Research Activity |
渡仏することは依然として困難なので、国内で実行可能な調査に絞り、課題を進める。具体的には、国内外専門誌への投稿、日本国内の調査を精力的に行う。申請時に予定していた海外での調査は行わない。代わって、国内調査機関に於ける文献調査、及び美術館、記念館等の見学と調査を積極的に実施して、成果発表を試みる。
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Causes of Carryover |
感染症拡大予防のため、海外渡航ができなかったうえ、罹患予防のため国内調査機関に於ける調査及び見学を含む資料収集も大幅に制限したため、主に旅費に充てていた予算が大幅に次年度使用となっている。社会状況を鑑みながら実行可能な調査方法に変更し、国内調査のための旅費、及び文献購入に充てる予定である。
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