2022 Fiscal Year Annual Research Report
「顔」の表象からみる詩的言語と近代化の関係ー仏サンボリスムと日本近代詩比較研究
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19K00500
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Research Institution | Gunma Prefectural Women's University |
Principal Investigator |
井村 まなみ 群馬県立女子大学, 文学部, 教授 (60315695)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 写真 / 肖像画 / フランス象徴主義 / 日本近代詩 / ランボー / ヴェルレーヌ / 萩原朔太郎 / 日本語翻訳 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究課題に則した比較研究については2019年度に発表した"Visage de Rimbaud, visage chez Rimbaud"及び「朔太郎の肖像、『月に吠える』のなかの「顔」」で展開した。その後、予期せぬ社会的状況の拘束を受け実施可能な形に課題を修正、「詩」と隣接する「小説」に於ける「肖像」の問題を扱い、フロベールの小説を分析した。 最終年度は「仏サンボリスムと日本近代史比較研究」の一環として、象徴主義を代表するヴェルレーヌの詩篇が20世紀前半、日本の詩人たちにどのように受容され翻訳されていたかを調査、考察する論考"Traduction japonaise de l'ennui verlainien dans trois Ariettes" を Rimbaud, Verlaine et Cie, "un devoir a chercher," A la memoire de Yan Fremy (Seth Widden編、Editions Classiques Garnier, 2023年9月出版予定)に投稿、受理された。当時の日本に於けるヴェルレーヌの受容を概観したうえで、『言葉なき恋歌』のうち多く翻訳された「忘れられたアリエット」VIII,III,Iの訳語と訳詩を収集、比較検討することで、詩篇の新たな読みを提示する試みである。堀口大學訳「巷に雨の降るごとく」の分析を含み、フランス定型詩と日本語訳の定型にも触れている。日仏文学的交流として、非常によく知られ、既に多くの解釈が為されている作品を取り上げ、原詩と訳詩を丹念に読むことで双方の読みに新しい光を当てた点で意義深く、ヴェルレーヌの詩に潜む「力」の一端を示すことができたと考えている。なお課題テーマを継続する資料収集のために、中原中也記念館及び宮澤賢治記念館の見学、鉄道敷設の歴史を展示する博物館の見学を実施した。
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