2020 Fiscal Year Research-status Report
Oeuvre comme un lieu de travail commun - manuscrit clandestin, anonymat et debat d'idees dans la litterature francaises des XVIIe et XVIIIe siecles
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19K00502
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
藤原 真実 東京都立大学, 人文科学研究科, 教授 (10244401)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 地下文書 / ロベール・シャール / 計量分析 / 18世紀 / 作者 / 匿名性 / 文献学 / フランス文学 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は次の2つの研究を中心に推進した。 1.『宗教についての異議』とそれ以外の17-18世紀フランスの哲学的地下文書の分析と筆者の推定。イタリア計算言語学研究所のフランチェスカ・フロンティーニとともに、17-18世紀フランス地下文書の筆者に関する研究を推進した。当該年度は次の二つの作業を中心に行った。(1)電子テクストを収集・精査し、それらをテクストファイル化( txt utf-8)した上でテクストの不純物を除去する作業。これまでに、『宗教についての異議』の2種類の写本のほか、匿名の地下文書8点、著者が推定されている地下文書8点、ロベール・シャールのその他の著作5点、同時代の著者の判明している著作約15点のテクストファイルを準備し、まだ精製が完了していないファイルを含め、計量分析のプレテストを開始している。(2)分析方法の試行錯誤。計量分析学の知見として、旧体制期のテクストの語彙とシンタックスを分析して得られる分布図は、作者の別ではなくむしろジャンルの別を示すことが知られている。実際に我々が行ったプレテストでもそうした結果が得られており、そのなかで筆者の個性をあぶり出すための分析方法を模索する実験を続けている。 2.著作権概念確立以前のフランスにおける作品の所有と匿名性の研究。当該年度は特にフランス18世紀の出版制度における作者の位置づけの変化と著作権概念の醸成に関する研究を推進した。その成果の一部を「著作権と出版産業」として、『啓蒙思想の百科事典』(丸善出版,2021年10月刊行予定)に寄稿した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
第1の理由はコロナ感染症の影響である。フランスでの研究会や打ち合わせが中止になったこと、大学教育体制の急激な変化により研究の時間が圧迫され、精神的にも追い詰められたことなどがある。当該年度の後半にはこの体制に慣れ、フランス、イタリアの研究者との打ち合わせや会議をオンライン上で再開した。 第2の理由は計量分析に使用するコーパスの準備に予想以上の手間と時間がかかっていることである。分析対象として重要な地下文書のなかには、L'Ame materiel, Le Ciel ouvert a tous, De l'examen de la religioin, L'examen critique des apologistes, Telliamed, Traite des trois imposteursのようにテクストファイルの入手に時間がかかっているものがある。"Philosophie clandestine"のプラットフォーム管理者でもあるマリア=スザナ・セガン氏の協力を得て入手を急いでいるところである。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度も引きつづき以下4つの課題に取り組むことで、17-18世紀フランス文学のなかに存在した共同作業としての作品の概念を明らかにする。 1.18世紀フランス哲学的地下文書の筆者に関する計量分析および文献学を用いた分析。計量分析言語学者フランチェスカ・フロンティニと協働してこの作業を行う。来年度内にフランスのロベール・シャール友の会において成果の口頭発表を行う。 2.17-18世紀のフランスとオランダで刊行された学術的定期刊行物と事典類の複数の筆者による「乗っ取り」や改編とそのなかに見られる思想論争をとおして、共同作業としての作品の概念を明らかにする。 3.古典古代の物語との対話をとおして創作された17-18世紀の物語と小説、異なる作者により同じタイトルやテーマで書かれた18世紀の演劇、17-18世紀小説の続編と偽作などを系列的アプローチにより分析する。 4.17-18世紀の地下文書および刊行物における匿名性の問題を、「テクストの冒険」という観点から研究する。以上2,3,4の中間的な研究成果を、ロベール・シャール没後300年を記念して2021年12月10日・11日にパリで開催される国際研究集会Robert Challe et l'aventureにおいて口頭で発表する予定である。
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Causes of Carryover |
コロナ感染症の影響でフランスへの渡航ができなかったため。
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Research Products
(5 results)