2022 Fiscal Year Annual Research Report
Oeuvre comme un lieu de travail commun - manuscrit clandestin, anonymat et debat d'idees dans la litterature francaises des XVIIe et XVIIIe siecles
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19K00502
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
藤原 真実 東京都立大学, 人文科学研究科, 教授 (10244401)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 地下文書 / 啓蒙思想 / 匿名 / 共同執筆 / 作者 / 間テクスト性 / 計量文献学 / 思想論争 |
Outline of Annual Research Achievements |
最終年度の第1の成果は、これまでイタリアの計量文献学・コンピューター言語学専門家とフランスの地下文書研究者、フランスの18世紀文学研究者と行ってきた共同研究の成果を共著論文として発表したことである。この共同研究は、近代小説、旅行記、理神論など多様なジャンルで18世紀フランス文学・思想の新たな展開を始動したロベール・シャールのコーパスを電子化して公開し、同時に同テクストと関連テクストを従来のテクスト批評とコンピューターを用いた計量文献学を用いて分析し、正典・外典の判別を行った。藤原はフロンティーニとともに『宗教についての異議』の分析を行い、第2・第3の筆者が参加した可能性を明らかにした。 第2の成果は、本研究課題の3つの論点である地下文書・匿名・思想論争が、啓蒙思想家ドゥニ・ディドロの約40年にわたるキャリアのなかでどのように用いられたのかを古い資料を掘り起こしながら考察し、と地下文書・匿名・共同執筆による作品内の思想論争が啓蒙思想を推進するためのいかに有用で不可欠な戦略であったかを明らかにした。 本研究は、17-18 世紀フランスの文学の中に、共同作業としての作品の概念──集団としての作者が時間をかけて作り上げる共有物としての作品の概念が存在したという仮説を立て、これを証明するために、哲学的地下文書については計量文献学の方法を援用して、著作物の中に複数の書き手が存在することを明らかにし、また印刷された著作物については匿名の第二の筆者が作品と対話し作品を変容させていく過程に光を当てた。その結果、著作物を単独の作者の専有物と見做す近代以降の一般的な考え方とは異なる、当該の世紀特有の作品のありようが存在したこと、そのように共有される作品の内部で起こる対話が啓蒙思想の原動力の一つになったことを示した。
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