2021 Fiscal Year Research-status Report
A Research on the Acceptance and Practice of Haiku in Chinese-Speaking Countries from Comparative Literature Perspective
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19K00525
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Research Institution | Tohoku University of Community Service and Science |
Principal Investigator |
呉 衛峰 東北公益文科大学, 公私立大学の部局等, 教授 (90458159)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
井上 健 日本大学, 国際関係学部, 研究員 (30121867)
西槇 偉 熊本大学, 大学院人文社会科学研究部(文), 教授 (50305512)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 俳句 / 中国語現代詩 / 台湾 / 俳句ブーム / 葛祖蘭 / 翻訳 / 季語 / 短詩型 |
Outline of Annual Research Achievements |
呉衛峰(研究代表者)はおもに台湾現代詩における俳句の影響について調査した。令和3年度は終戦から1990年代前半にかけての資料を解読し、戒厳令解除までの日本文学研究の状況を明らかにしながら、戒厳令解除後の日本文学解禁、特に『聯合報』と『中国時報』の間の競争で結実した1993年の「俳句ブーム」を分析した。戒厳令下では、本格的な日本文学研究が政治的理由で満足のできる状態で進められなかったので、1988年の戒厳令解除以降、行き詰まりつつあるモダニズムの現代詩人たちは俳句に目を向け、中国語現代詩にとって一つの出口を見つけたことになる。令和3年度は1990年代前半の大手新聞が仕掛けた「俳句ブーム」でにぎわい、その後、中国語俳句は現代詩の一つのジャンルに発展したのである。 さらに、呉は日ロ戦争後の旧満州における俳句活動に注目し、満鉄や満州国におけるホトトギス派中心の俳句活動を調査した。その影響で日本語で俳句を創作し、正岡子規等の俳句を中国語に翻訳した葛祖蘭について、その著作『祖蘭俳存』などを通じて綿密な調査と分析を行った。終戦前の台湾俳句と満洲俳句に関しては、日本本土と異なる熱帯・亜熱帯および寒帯という気候上の相違により、俳句という文学ジャンルの中心である「季語」の多様化・拡大・実験が大きな課題となっていた。呉は満洲俳句の資料を収集しており、考察・分析の途中である。これは俳句国際化にとってバイパスできない重要な課題であるので、令和4年の研究、および次の科研費研究にもつながる。 井上と西槇(研究分担者)はそれぞれ計画通りの研究調査を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
令和3年度のコロナ状況、おもに同年度前半の台湾のパニック状態により、当初予定していた資料調査は大幅に遅れたことになっている。その故、呉衛峰は台湾現代詩における俳句の影響についての研究は資料の遅延により、同年度中は前半のみ完成し、後半は令和4年度に完成する予定である。 なお、終戦までの旧満州における俳句活動についての調査も、渡航が不可能であったので、資料調査は大分遅れてしまった。 井上と西槇は同じ理由で俳句についての研究発表を見合わせている。
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Strategy for Future Research Activity |
呉は台湾現代詩における俳句の影響について、1990年代半ば以降から現在にかけての状況を調査分析し、論文の後半をまとめる。そして、終戦前における旧満州と台湾の俳句における「季語」の問題をとりあげ、俳句国際化の根本的問題の考察にとりかかる。 井上と西槇は見合わせた調査発表を行う予定である。 さらに、中国本土と台湾の学者や詩人・俳人とのコミュニケーションの状況にもよるが、令和4年度の後半に本科研費研究の仕上げとしてもう一回国際シンポジウムを行う予定である。
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Causes of Carryover |
コロナ状況により、使用予定の旅費が発生しなかったのは次年度使用額が生じた主な理由である。旅費の使用は、研究調査や対面会議・対面打ち合わせ等が含まれる。 次年度においては、使用額は関連書籍の購入とその他の研究資料の収集を中心として使用される予定である。 コロナ状況にもよるが、調査旅行が可能になれば、日本国内もしくは海外への資料調査旅行にも使用される予定である。
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