2020 Fiscal Year Research-status Report
Nishimui: Artists' Colony and Okinawan Literature
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19K00526
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Research Institution | Bunkyo University |
Principal Investigator |
本浜 秀彦 文教大学, 国際学部, 教授 (60441961)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ニシムイ美術村 / 戦後沖縄文学 / イメージの運動体 / 美術教育 / 米軍統治 / 装幀 / 挿画 / アメリカニズム |
Outline of Annual Research Achievements |
2年目にあたる2020年度は、10月と12月の2回、いずれも3泊4日のスケジュールで沖縄への出張を実施した。沖縄県立博物館・美術館、沖縄県立図書館などでの調査・資料収集が中心だったが、2019年度に勤務先から機会を得た在外研修で、海外の研究者と交流などから再認識した近代日本の美術教育のユニークさを、研究テーマに取り組むべく行ったのが、10月の出張の際に行った、県立那覇高校(旧県立二中)でのヒアリング調査、資料収集だった。同校は、戦前から戦後にかけて、沖縄の美術教育を牽引した時期があり、ニシムイ美術村の画家たちをはじめ、多くの美術関係者を輩出している。出張中、関係者から有益な話を聞けたほか、同窓会が所有している貴重な資料などを入手した。それらの資料の整理、分析をその後も、継続して行っている。また、美術館の学芸員や研究者との意見交換なども実現でき、研究ネットワークを広げることができた。 安谷屋正義、山元恵一らのニシムイの画家の作品については、限られらた点数ではあったが、沖縄県立博物館・美術館でオリジナルに触れる機会があったほか、ギャラリー関係者からも現在の沖縄にアート市場に関する情報も得ることができた。 沖縄文学に関しては、すでに収集、撮影している大城立裕、又吉栄喜、目取真俊ら現代作家各氏の単行本、文庫本などの装幀に関し、その整理、分析を進めている。なお2020年10月、戦後沖縄文学を牽引した大城が他界した際には、地元紙『琉球新報』に追悼のエッセイを発表し、氏の作家としての業績を評価した(11月5日付紙面)。 装幀デザインのイメージ分析、20世紀のアメリカニズムについての研究も引き続き進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
初年度の2019年度は、勤務先から在外研修の機会を得て海外にいたこともあり、直接経費は使用せずに、滞在先である英国の研究機関や大学などの図書館での図書を利用した研究が中心となったため、2020年度はその遅れを挽回すべく計画をたてた。しかし、コロナ禍の影響で当初予定したスケジュールで調査・資料取集は当初の予定通りにはうまく事が運ばなかった。また研究者や美術関係者との情報交換などの機会も多くの制限を受けることになった。それでも2020年10月と12月の2回、調査と資料取集を目的とした沖縄への出張は、さまざまな制限があった中でも、本研究を進める機会となった。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度の2021年度は、引き続き沖縄県立博物館・美術館、沖縄県立図書館などで、調査・資料収集を行うとともに、沖縄文学の本の装幀と沖縄の戦後美術の関係に焦点をあてて研究を進めていく。それと並行して、本の装幀に関し、その理論化を進める。 一方で、ニシムイの画家たちが受けた美術教育についても引き続き調査を行う。彼らと交流のあった画家(藤田嗣治、福沢一郎ら)からの影響や、20世紀のアメリカニズムからの影響など、巨視的な視点からの検証も進める。 最終年度は、研究の成果を発信を行うことが求められるが、コロナ禍の状況をにらみつつ、できればシンポジウムの開催を予定しており、その準備を進める。
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Causes of Carryover |
2020年度は、コロナ禍への影響もあり、計画していた沖縄出張の回数を減らざるを得ず、またほかの国内出張も見送る判断をしなければならない状況だったため、次年度使用額が生じることになった理由である。 最終年度となる2021年度は、研究成果を発信するシンポジウムの開催を予定しており、それに関連した出張、シンポジウム開催のための準備、登壇者への謝金は、当初予定の経費をあてることになる。 次年度使用額となった分は、これまでの研究から、本の装幀に着目した分析をさらに進めていく必要が出てきたため、装幀デザインや美術作品を記録として残す備品(カメラおよびレンズ)を購入するための支出に回したい。
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