2020 Fiscal Year Research-status Report
批判・ロマン主義・日本的近代――近代諸社会における「文学的なもの」の身分規定
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19K00528
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
片岡 大右 慶應義塾大学, 商学部(日吉), 講師(非常勤) (30600225)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ロマン主義 / デヴィッド・グレーバー / 加藤周一 / 古井由吉 |
Outline of Annual Research Achievements |
1)2020年度は何より、当初は副次的な役割を想定されていた人類学者デヴィッド・グレーバー研究という視角が、本研究課題の中核をなすものとして位置づけ直されたことが重要である。「日本的近代」の主題を検討する際の補助線を提供してくれるものとして『民主主義の非西洋起源について』を翻訳刊行するとともに関連論考を発表(特に「未来を開く――デヴィッド・グレーバーを読む」『群像』2020年9月号および「「魔神は瓶に戻せない」──デヴィッド・グレーバー、コロナ禍を語る 」以文社ウェブサイト)、予想外の大きな反響を得た直後に著者が59歳で急逝したこともあって、『朝日新聞』ほか複数の媒体に追悼記事を発表するほか、今後の研究成果発表に関わる幾つもの申し出を受けることができた。
2)加藤周一研究に関しては、2019年度の国際シンポジウム報告を踏まえた論考を論集『加藤周一を21世紀に引き継ぐために』中に発表することができた(「非ヘーゲル的な夕暮れへの招待――加藤周一と弁証法」)ほか、2021年3月に立命館大学の加藤周一文庫を訪問して資料調査を行うとともに、本論集の合評会開催に向け、立命館および日仏会館の関係者と相談した。
3)現代日本を代表する作家であり、ロマン主義とその日本における受容の観点からしてもきわめて重要な著者とみなしうる古井由吉の死去を受け、『週刊読書人』に私的な交流を振り返る追悼記事を寄せる一方、急遽刊行された『古井由吉 文学の奇蹟』のために全作品を再読のうえ「古井由吉の風景のための序説」を執筆し、今後の本格的な研究への足がかりを提供した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「研究実績の概要」に記したデヴィッド・グレーバー研究という新たな視角の導入は、半ば偶然によりもたらされたものとも言えるが、本研究課題を大きく発展させ、以後の反響を約束してくれるものであることは間違いない。その一方、この新たな取り組みに時間を割いたことに加えコロナ禍に伴う教育面での繁忙化もあり、予定されていたいくつかの成果発表は次年度に持ち越されることとなった。予想外の発展と予定の停滞の両面を考量して、「おおむね順調に進展している」と自己評価する。
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Strategy for Future Research Activity |
作業の最終段階にありながら棚上げになっている2つの翻訳(『預言者の時代』と『批判について』)を完成させる。加藤周一研究の単著の執筆を進めるが、グレーバー研究という新たな領域でも、学会シンポジウムへの参加や著書の執筆を要請されており、こちらについても精力的に進めるとともに、本研究課題への統合を図っていく。また、「批判/批評」の領域拡張(現代美術やポップ・カルチャー)についても、さらなる発展に取り組む。
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Causes of Carryover |
コロナ禍に伴い、海外からの書籍取り寄せに時間がかかったこと、および年度末の3月中旬に出張日程を組んだことにより、次年度繰越が生じた。繰越分は、次年度の書籍購入および旅費として使用する。
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Research Products
(8 results)