2021 Fiscal Year Research-status Report
The view on children and children's rights in Sveriges Radio's broadcasts
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19K00531
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
上倉 あゆ子 東海大学, 文化社会学部, 准教授 (70467520)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 北欧 / スウェーデン / 子ども文化 / テレビ・ラジオ / 児童文学 / 子どもの権利 / メディア |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度も新型コロナウイルスの影響で現地調査が実施できない状況が続いた。加えて、2021年度末にあたる時期にはロシアによるウクライナ侵攻があり、北欧地域への渡航が一層困難となった。そのため、郵送での入手が可能であった文献資料の範囲で研究を進めざるを得ない状況が続いている。 本研究の目的は、「こども文化」においてスウェーデンのラジオ放送が果たしてきた役割を概観し、スウェーデンではいかにしてラジオが「こども」の視点に立ったメディアとして成立しているのかを分析するというものである。2021年度は、ラジオのみならずテレビも含めた公共放送全般における「こども」と「こどもの権利」への視点に関する整理を進める中で、「ろう児」と「メディア」との関わりについて、ケイパビリティ概念の観点からの考察を共著論文としてまとめる作業を進めた。この共著論文においては、こどもが十全な成長を遂げるためには安定したアイデンティティと高い自尊心の獲得が重要であることを確認し、スウェーデンの「子どもチャンネル」における少数派言語や手話による番組提供は、スウェーデン社会が少数派や手話話者の存在を承認していることを示すサイン であり、こどもたちの肯定的なアイデンティティや自尊心形成に寄与していることを示した。このことを通して、本研究で取り上げているスウェーデンの児童文学作家グンネル・リンデ(Gunnel Linde)がその作品や活動で果たした役割を考察する上でも、ケイパビリティ・アプローチが有効ではないかと考えている。 2021年度においては、スウェーデンのテレビ・ラジオ放送に関わる資料収集を進め、その歴史に関する情報はある程度入手できたものの、その中でグンネル・リンデに関する記述は非常に限られていることが確認された。そのため、リンデの業績を分析する作業には遅れが出ている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
本研究においては、本来であれば現地調査を複数回実施する予定であったが、初年度より海外渡航が不可能な状況が続いている。2021年度も海外出張はできない状況が継続し、年度の終わりにはロシアによるウクライナ侵攻という事態となり、北欧地域への渡航がよりいっそう困難となった。そのため、現地調査でのグンネル・リンデ関連資料の収集・分析などは実施できていない。 また、2019年度の後半から2021年度の後半にかけての期間については、日本からスウェーデンの書籍を購入する際にほぼ唯一利用可能となっている大手インターネット書店が日本への発送を停止していた。そのため、郵送による資料収集も大きく制約された状況となっていた。2022年2月にようやく上記のインターネット書店が日本への発送を再開したが、年度内に収集できた資料の分析やその成果をまとめる作業についてはまだ十分に進められていない。 以上のことから、進捗は「遅れている」とせざるを得ない状況である。
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Strategy for Future Research Activity |
現地調査ができない状況が続き、当初の計画通りに研究を遂行できていないが、新型コロナウイルスに関わる状況はかなり好転してきているため、ロシア・ウクライナ情勢を見ながら、スウェーデン王立図書館・スウェーデン児童書研究所等への訪問調査(特にグンネル・リンデに関する資料収集)を実施したい。 2022年度は、作家・プロデューサーであったグンネル・リンデが公共放送のこども番組への取り組みで果たした役割、そして、スウェーデンの公共放送全体の「こどもの権利」への視点について、ケイパビリティ概念を用いて研究を進め、論文執筆を行ないたいと考えている。
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Causes of Carryover |
2021年度も引き続き海外出張ができない状況が続き、海外調査の費用として計上していた分を予算執行することができなかったため。 2022年度においては、ロシア・ウクライナ情勢の影響により、現地訪問の明確な見通しを立てることが引き続き困難な状況ではあるが、年度後半の現地調査実施を目指している。予算執行に関しては外的要因により計画から大幅なずれが生じているが、現地でのみ可能な資料収集等について、人件費・郵便通信費等として使用することも検討している。
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