2019 Fiscal Year Research-status Report
明治・大正期の日独思想・文化交流の多角的研究:北欧作家ラーゲルレーヴを媒介に
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19K00532
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
中丸 禎子 東京理科大学, 理学部第一部教養学科, 准教授 (50609287)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
加藤 敦子 都留文科大学, 文学部, 教授 (40625448)
田中 琢三 お茶の水女子大学, 基幹研究院, 准教授 (50610945)
兼岡 理恵 千葉大学, 大学院人文科学研究院, 准教授 (70453735)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 日独交流 / スウェーデン / ハンブルク大学 / カール・フローレンツ / 芳賀矢一 / モーリス・バレス / 高畑勲 / 受容 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究代表者・研究分担者は、2011年より、言語・国・地域を超えた文学の共同研究を、その方法のあり方も含めて研究してきた。本科研研究は、2013年度~17年度の科研費基盤(C)「世界文学としてのアンデルセン『人魚姫』の超領域的研究と教養教育への応用モデル」を発展させ、各自の個人研究とより密接に関わるテーマへと専門性を高めたものである。 2019年度は、研究代表者・分担者それぞれが本科研研究「明治・大正期の日独思想・文化交流の多角的研究」に関する準備・発表を進めるとともに、協働して『高畑勲をよむ』(三弥井書店)の編集作業を進めた。同書は、日本の古典や西洋の児童文学を原作・原案とする高畑氏のアニメ制作を、昭和・平成期の日本における日本古典・西洋児童文学の受容の一形態ととらえ、高畑氏がアニメ化した作品や影響を受けた作品を論じることで、アニメーションを軸に戦後日本の文化・知識のあり方を明らかにする研究である。代表者・分担者は、日文・独文・アニメ論などの専門家の論文を編集する一方で、それぞれ以下について論じた。田中は「高畑勲とフランス文学」(328-343頁)で戦後日本の仏文系知識人としての高畑の側面を明らかにした。加藤は「物語・風流・浄瑠璃」(187-202頁)で高度経済成長期の多摩丘陵の開発を描いた『平成狸合戦ぽんぽこ』の浄瑠璃受容としての側面を指摘した。兼岡は「「五コマ目」を紡ぐ」(170-186頁)で、俳句を取り入れた『となりの山田くん』の戦後日本の家族の描き方を論じた。中丸は「「わたしはおうきくなりたくない」」(269-287頁)で、スウェーデンの作家リンドグレーンの『長靴下のピッピ』における欧米および日本の戦後児童文学の出発点としての特性を考察した。これらを通じ、各自が、自身の専門研究の対象と戦後日本における欧米思想・日本古典の受容に関する知見を深め、公表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
『高畑勲をよむ』は、各分野の専門研究者をまとめ、言語・国・地域を超えた共同研究という本科研の大きな目標を十二分に満たし、昭和・平成期の日本における西洋思想の受容研究について広く一般に還元する形で成果を発表した。 一方、狭い意味での中心テーマである「明治・大正期の日独思想・文化交流」に関する直接的な成果は、兼岡「『山城国風土記』逸文・伊奈利社条のドイツ語訳」「十九世紀末における風土記享受」「文学史攷究法研究」百年」「芳賀矢一と風土記」、田中琢三「バレス『デラシネ』におけるユゴーの葬儀」である。中丸、加藤は資料収集を進めたものの、まとまった成果の公表に至らなかった。また中丸は、2020年度にスウェーデンでの在外研究を予定しており、現地での資料収集・成果発表に向けて準備を進めていたが、新型コロナウィルスのため渡航直前で在外研究が中止となり、研究計画の変更と一時的な停滞を余儀なくされた。 2020年度は、研究代表者の中丸が研究計画を立て直すとともに、公表・非公表の成果を研究代表者・分担者で共有し、2021年度の共同成果発表に向けて活動し、この遅れを取り戻す予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
研究代表者が2020年度に予定していたスウェーデン・ウップサラ大学での在外研究が中止となり、現時点で再開の見通しが立たない。また、国内会議・国際会議の予定が数年にわたって変更される可能性もあるため、今後の研究の推進方策も流動的となる。ただし、大筋は変わらず、2021年度(もしくは次年度)に国内で日本語による共同成果発表、2022年度に国際比較文学会で英語による共同成果発表、2023年度に書籍刊行を予定している。これらが開催されない場合には独自にオンライン研究会を開催、2021年度以降に中丸の在外研究が可能になった場合は準備をオンラインで進めるなど、代替手段による情報交換・成果発表も想定して今後の研究を進める。 研究代表者は、2020年度、予定していたスウェーデンでの資料収集・成果発表に代わり、日本国内でドイツの思想家ヴィルヘルム・グンデルトの明治・大正期の日本における活動についての資料収集・成果発表を行う。2020年度後半に日本語で成果を発表したのち、これを英語訳し、2021年度以降に在外研究が可能となった場合には、現地での発表・意見募集に活用する。 共同研究としては、2020年度前半に、現時点でまとまった成果を公表している兼岡・田中の研究内容を精査し、2021年度の共同発表にむけて具体的なテーマ、発表場所を確定、2021年度後半はその準備を進める。
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Causes of Carryover |
現在までの進捗状況が「やや遅れている」こと、新型コロナウィルスにより研究代表者の在外研究が中止されたこと、2020年3月に予定していた研究会を中止したことから、次年度使用額が生じた。 次年度は、学会・研究会中止などによる予算の変更も予期される。次年度使用額と併せ、次年度の予算は、国内・国外旅費として予定していた予算を、オンライン研究会に必要な機材、図書館の利用制限に対応するための図書購入・複写、現地での資料収集を補填するための海外からの資料取り寄せに充て、従来予定していた計画の遂行のために使用する。
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Research Products
(11 results)