2021 Fiscal Year Research-status Report
明治・大正期の日独思想・文化交流の多角的研究:北欧作家ラーゲルレーヴを媒介に
Project/Area Number |
19K00532
|
Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
中丸 禎子 東京理科大学, 教養教育研究院神楽坂キャンパス教養部, 准教授 (50609287)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
加藤 敦子 都留文科大学, 文学部, 教授 (40625448)
田中 琢三 お茶の水女子大学, 基幹研究院, 准教授 (50610945)
兼岡 理恵 千葉大学, 大学院人文科学研究院, 教授 (70453735)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | 北欧受容 / 北欧 / デンマーク / ドイツ / 内村鑑三 / ナショナリズム / キリスト教 |
Outline of Annual Research Achievements |
代表者の中丸禎子、分担者の田中琢三が単著論文を刊行した。また、田中を中心に、2021年7月に「お茶の水女子大学第23回国際日本学シンポジウム」枠内でシンポジウム「近代日本と北欧・ドイツ―文学・宗教・ナショナリズム」を開催し、その成果を『比較日本学教育研究部門研究年報』第18号(お茶の水女子大学グローバルリーダーシップ研究所)に掲載した。シンポジウムでは、代表者・分担者のほか、ペーターセン エスベン(南山大学)が登壇した。ペーターセンは基調講演「近代日本における新神学とそのパラドクス」を行い、同タイトルの論文を上記年報に掲載した(9-15頁)。 同シンポジウムでは、明治・大正期における北欧・ドイツと日本の文化交流を、おもにキリスト教とナショナリズムという観点から検討した。内村鑑三『デンマルク国の話』(1911)は植樹に成功し国力を回復させた理想の国としてデンマークを紹介し、日本に北欧のポジティヴなイメージを流布させた。他方で、内村『余は如何にして基督信徒となりし乎(原題:How I Became a Christian)』(1895)は、ヘルマン・ヘッセの従弟にあたるヴィルヘルム・グンデルトが翻訳したドイツ語版を契機にヨーロッパ諸国で読まれた。グンデルトは、東京帝国大学独文科のお雇い外国人教師でもあったハンブルク大学の教授カール・フローレンツのもとで博士論文「日本の能における神道」を執筆し、フローレンツの後継者としてドイツにおける日本学の第一人者となった。「キリスト愛国」を唱えた内村の北欧・ドイツにおける受容や、宣教師で後にナチ党員となるグンデルトの日本との関わり、あるいはそれらの周辺の文学を探りながら、近代日本におけるキリスト教の受容のあり方と、信仰や伝道と密接に結びついたナショナリズムの展開を、日本・ドイツ・北欧の関係という国際的な視座から再考した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2021年度前期は「お茶の水女子大学第23回国際日本学シンポジウム 近代日本と北欧・ドイツ―文学・宗教・ナショナリズム」の開催、後期はその文章化を行い、成果を公開することができた。また、2021年度後期より、外部執筆者を招き、当科研研究の最終成果論集刊行に向けた研究会を始めた。中丸、田中、兼岡は関連テーマで単著論文を刊行した(中丸、田中の論文は雑誌掲載。兼岡単著論文「藤代禎輔『独訳万葉集第五巻鈔』―日本人による『万葉集』ドイツ語訳の先蹤―」は鉄野昌弘・奥村和美編の図書『萬葉集研究』第41集に掲載)。いずれも計画通りの進行である。
|
Strategy for Future Research Activity |
2022年度は、最終成果論集の刊行に向けた研究会を継続する。また、代表者の中丸が国際比較文学会で関連テーマの発表を行い、今後、日本国内のみならず、国際的に成果を発表する準備を整える。
|
Causes of Carryover |
2021年度も等科研主催研究会、代表者・分担者所属学会ともにオンライン開催となり、旅費の出費がなされなかった。 2021年度は、対面開催実施の研究会に参加するため、代表者・分担者の旅費、招聘研究者への旅費・謝金支出が生じる。また、感染状況および移動時間省略のため引き続きオンライン研究会も開催するほか、感染状況に配慮しながら、ハイブリッド研究会を開催する。ハイブリッドという新たな開催形式に対応するため、遠隔会議用マイクなどハイブリッド開催の環境を整える費用として繰越額を使用する予定である。
|
Research Products
(21 results)