2019 Fiscal Year Research-status Report
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19K00535
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Research Institution | Tokyo Junshin University |
Principal Investigator |
大竹 聖美 東京純心大学, 現代文化学部, 教授 (60386795)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 児童文化 / 児童文学 / 朝鮮 / 方定煥 / 植民地 / 韓国文学 / オリニ運動 |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年度は、児童文学の視点から見た<朝鮮少年運動>の核心人物である方定煥の研究を進展させた。3・1独立運動後に東京に渡った朝鮮人留学生たちによって発足された児童文学同人「セクトン会」の活動と、現在に続く韓国の子どもの日(オリニナル)の設立契機となった「天道教少年会」の児童人権運動は、いずれもその推進は方定煥によってなされている。「セクトン会」設立の経緯やメンバー、活動内容に関して、実証的な史料調査、史跡踏査を進めた。 研究実績として論文にまとめたのは、方定煥が<少年運動>の一環で創刊した児童文芸誌『オリニ』(1923年3月創刊)に掲載した本人による翻案作品と創作作品の分析である(「近代朝鮮における<童話>の形成過程―方定煥が翻案したイソップ寓話「ソウルねずみと田舎ねずみ」と創作童話「田舎ねずみのソウル見物」の考察―」東京純心大学『現代文化学部 紀要』第24号、2020年3月(査読有))。 方定煥の少年運動に関しては、次のように整理できる。①1921年に23歳で「天道教青年会」東京支会会長となり、東洋大学の聴講生として東京に滞在した。②同年5月1日に「天道教少年会」を設立した。③1922年5月1日に24歳で「オリニエナル(こどもの日)」を宣布し、創立記念式を開催した。④同年7月7日に朝鮮で初めて一般に普及した童話集である『愛の贈り物』を開闢社から出版した。⑤1923年3月に、25歳で朝鮮初の児童文芸誌『オリニ』を開闢社から創刊した。⑥同年 5月1日に、東京で「セクトン会 」を創立し、発会式を行った。さらに朝鮮では「少年運動協会」名義 で「第一回オリニナル(こどもの日)」を開催した。これらに関しては、今後さらに個別に実証的に考察していく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
韓国児童文学の開拓者として知られる方定煥(パン・ジョンファン、1899~1931)が中心となって設立された「セクトン会」や「天道教少年会」の活動は、<少年運動>として1920年代以降、朝鮮の児童文化に影響力があった。これらは植民地朝鮮における独立運動、民族運動の少年版であり、抑圧された朝鮮の少年を対象として前近代的因習からの解放と主権回復を啓蒙し童謡、童話、公演童話会、子どもの日の集会など新文化を普及させた。 主として韓国での現地資料調査、史跡踏査、聞き取り調査を行いながら、原典の翻訳と資料の整理分析を行い、研究成果と翻訳資料を発表していく研究活動スタイルだが、2019年度は、8月にソウル出張を行い、主として天道教教会資料室にて『天道教会月報』の調査とソウル市内の方定煥関連史跡の踏査を行った。方定煥研究所研究員との資料交換も意義があった。 3月に予定されていたソウル出張では、方定煥研究所研究会にて成果発表と慶熙大学韓国児童文学研究センターにて資料収集の予定だったが、新型コロナウイルス感染症拡大のため、中止となった。 しかし、2019年度の研究成果は、研究実績の概要に記した通り、「近代朝鮮における<童話>の形成過程―方定煥が翻案したイソップ寓話「ソウルねずみと田舎ねずみ」と創作童話「田舎ねずみのソウル見物」の考察―」東京純心大学『現代文化学部 紀要』第24号、2020年3月(査読有)にて報告した。
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Strategy for Future Research Activity |
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的な流行があり、2019年3月のソウル現地踏査と資料収集のための渡韓を断念した。2020年4月現在も新型コロナウイルス感染症は拡大し続けており、8月に韓国・大邱で予定されていた児童文学の国際大会である「第15回アジア児童文学大会」は2021年度へ延期とする旨の発表が韓国児童文学学会よりなされた。 そのため、2020年度に予定していた国際大会での研究成果発表はできなくなった。しかし、2020年11月に予定されている「日本児童文学学会 第59回研究大会」にて発表する方向に計画を変更する。
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Causes of Carryover |
3月に予定していた韓国・ソウルへの研究出張(資料収集、韓国児童文学学会との打ち合わせ、現地史跡踏査等)を、新型コロナウイルス感染症拡大のため中止としたため。 2020年度に研究出張が可能となった段階でこの予算を使用して資料収集等を行う。
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