2020 Fiscal Year Research-status Report
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19K00536
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Research Institution | Nagoya Gakuin University |
Principal Investigator |
土屋 勝彦 名古屋学院大学, 国際文化学部, 教授 (90135278)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 越境文学 / 多言語性 / エクソフォニー / 翻訳論 / アイデンティティ / 物語論 / インターカルチュラリティ / 異文化論 |
Outline of Annual Research Achievements |
コロナ感染症拡大のため、外国出張や国内出張も控えざるを得ない状況となり、学会や研究会は主にオンラインで行った。まず2020年11月に日本独文学会秋季研究発表会においてシンポジウム「言葉を逍遥する詩人、多和田葉子の文学をめぐって」を行った。5名の発表者により日独語作家である多和田葉子の文学をめぐって、翻訳論および自己翻訳の問題から演劇作品とパフォーマンス、さらに物語論および語り手論に至るまで、初期から最新作までの日独語諸作品を対象として、包括的かつ根源的な多和田文学の特質と方向について発表し、活発な討論を行った。最後に多和田氏も登場しコロナ問題の続く中での近況について語っていただいた。同じく11月にはハンガリー出身の越境作家テレツィア・モーラの作品翻訳出版を記念して東京ゲーテインスティテュート主催の自作朗読会を行い、著者および翻訳者との往復書簡もホームページ上で公開した。2021年3月には日本独文学会機関誌『ドイツ文学』国際版161号において、「多和田葉子ーエクソフォニーの詩学」特集号を編纂し、多和田葉子の詩1篇、イルマ・ラクーザ、リディア・ミッシュクルニヒ、アン・コッテンという3名の越境作家のエッセイ、そして4名の研究者による論文を掲載することができた。異質なるものへの視線から言語変革と新たな表現へと邁進してきた作家の新たな相貌が明らかになった。また2020年11月のオーストリア現代文学ゼミナールはダニエル・ヴィッサーを招待作家として開催した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
コロナ感染症拡大のために、シンポジウムや研究会などが当初計画していた形式では実現できなかった。またオンラインでの催しでは、やはり実りある議論や知見の深まりについて十分な成果を得ることが難しいように思う。また海外や国内での研究出張もほとんどできない状況だったため、直接的な面談や意見交換、また資料収集など現地で行うべき研究の進展にはやや障害があった。作家との面談や意見交換は本研究の貴重な一次資料であり不可欠である。さらにコロナ問題拡大のため、大学での公務である講義や演習、また学務などにおいて例年以上の時間がとられたことも研究推進には障害となった。そのため当初の計画よりもやや研究の進展が遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
今年は9月に4,5名のドイツ語圏越境作家たちを招待してシンポジウム「移動するアイデンティティ」を開催する予定である。コロナ感染症が収まらない場合はオンラインにより開催する。夏と冬にはベルリンおよびウィーンへの研究出張を予定しているが、これもコロナ感染症の状況しだいである。また日本独文学会誌のオーストリア文学特集では、日本と関わる越境作家や批評家にも執筆を依頼している。
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Causes of Carryover |
国際シンポジウムがコロナ感染症により開催できなかったこと、また海外及び国内研究出張もできなかったことにより、予算をすべて使用することができなかった。 今年度は9月に国際シンポジウムを開催する予定である。
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