2019 Fiscal Year Research-status Report
1940年代の若手文学者ネットワークと「世界文学」概念:福永武彦を軸に
Project/Area Number |
19K00537
|
Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
中島 亜紀 (西岡亜紀) 立命館大学, 文学部, 准教授 (70456276)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岩津 航 金沢大学, 歴史言語文化学系, 教授 (60507359)
戸塚 学 武蔵大学, 人文学部, 准教授 (70633014)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 比較文学 / 世界文学 / 日本文学 / 福永武彦 / 加藤周一 / 池澤夏樹 / 堀辰雄 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、福永武彦を軸として1940年代日本の若手文学者の「世界文学」概念をめぐる人や知のネットワークを解明することに努めた。彼らの文学の萌芽期に盛んに議論された「世界文学」概念の全体像、その言説を作り出した教育、先行作品、共通体験、人のつながり、彼らの実作や同時代・後続の文芸への波及などを調査・解明を目指した。 基礎研究及び個々の学会等における成果公表は、研究者ごとに行った。研究代表者・西岡は、福永武彦及び同時代作家、出版史、小説理論、近代日本のキリスト教宣教史、最新の小説動向などを中心に、新たな文献資料の拡充を図った。また、図書の分担執筆を含めて3本の関連論文を執筆、チューリッヒ国立博物館における講演1件、学会の支部例会におけるシンポジウムの企画運営と司会を1件行った。研究分担者・岩津は、在外研究先のフランスにおける資料探査、トゥ―ルーズ大学における講演2件、関連論文1本の執筆、『草の花』仏訳書の出版準備などを進めた。研究分担者・戸塚は、図書の分担執筆も含めて6本の関連論文の執筆、国内の学会における講演1件と精力的な成果還元を行った。 上記に加えて、西岡は、立命館大学で開催された「加藤周一生誕100周年記念シンポジウム」における講演者の一人である池澤夏樹(作家、福永武彦の実子)の招聘のための協力、共同研究者や学生などへの情報発信を行い、2019年度の年次講演会の一つとした。また2020年3月に刊行した『年報・福永武彦の世界』第5号では、岩津と戸塚は論文を1本ずつ寄稿、西岡は立命館大学加藤周一文庫所蔵の福永献呈本リストの寄稿、3名ともに座談会を企画運営したものを文字化した。責任編集は西岡が行った(印刷刊行費は西岡の別の科研費から支出)。なお、これらに加えて、2020年2月または3月に、学生参加型の研究会の立ち上げを行う予定であったが、コロナ禍のために延期した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究代表者、研究分担者2名それぞれ、基礎研究、成果公表ともに、おおむね順調に進めることができた。ただ、2~3月のコロナ禍の影響で、2~3月の学生の春休み期間に立ち上げる予定であった学生参加型研究会が実施できなかった。また、3月に開く見込みであった2020年度の活動計画についての3者での打合せも見合わせたので、2020年度以降の活動には影響は出るかもしれない。
|
Strategy for Future Research Activity |
2020年度も引き続き基礎研究と個人の成果還元は各自が進めつつ、社会・教育への還元を協力して行うことを目指す。ただし、コロナ禍の影響で、出張、調査、研究会、講演会等の予定や形態を変更せざるを得ないため、今後の推進方策は変更を余儀なくされる可能性はある。 とくに、春学期が研究休暇(学内)の西岡は、2020年度は実地探査に軸足を置く予定であったため、大幅な代替手段を講じる必要がある。現状の計画は代替案も含めて以下。 ①1930~40年代の教育体制に関して東京大学ほかの国内関連機関での1940年代の日本における『新フランス評論』ほかフランス語文献の移入状況の把握 ⇒移動が可能となり諸機関での調査が可能になるまでは、オンラインでできる文献探査で代替 ②フランスのパリ外国宣教会(MEP)、パリ日本館の踏査 ⇒渡仏や海外からの文献収集が可能になるまでは、過去に作成済の日本館滞在者リストの情報拡充作業に代替 ③西岡主催の学生参加型のレトリックや表の研究会の立ち上げや定例勉強会の運営・講演会企画 ⇒当面はオンライン形式で立ち上げ・運営。グローバル・グローカルな研究会運営の新たなツールや方法の開拓も兼ねた活動として試運転する。これとも関連して、情報共有・意見交換のためのwebサイト構築を進める。 研究分担者らの当初の研究計画は以下の通りだが、それぞれの状況に応じて代替を講つつ進める。岩津は、加藤周一のフランス文学理解を同時代フランスにおける批評と比較考察、そのための調査や講読をフランスや国内の関連機関で行い、フランス文学に立脚した当時の加藤の批評がもつ射程を明らかにする。戸塚は、堀辰雄から中村真一郎や福永武彦に何が引き継がれたのか、また堀を中心に集まった若い文学者達がどのような書物や知を共有していたのか、具体的な作品分析や彼等の言説の分析を通して明らかにする。
|
Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由は、以下の2点である。1つは、コロナ禍の影響で、2月~3月の打合せ、出張、研究会の開催等の予定を見送ったため。もう1つは、購入を希望していたパソコン機種のモデルチェンジの関係で発注が年度を繰り越してしまったため。 翌年度分の使用計画は以下。予定通り、パソコンの購入費(既に発注済)に充てる。3月に予定していた研究会をリモート開催に振り替えて開催する。リモート開催によって招聘者の移動経費等が必要なくなった分は、今後、webサイトの開設やタブレットほかのwebコンテンツの拡充など、新たな情報発信の方法を模索するために用いる。
|
Research Products
(19 results)