2020 Fiscal Year Research-status Report
A descriptive study of endangered varieties of the nDrapa language
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19K00543
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Research Institution | Tokyo University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
白井 聡子 東京外国語大学, アジア・アフリカ言語文化研究所, 研究員 (70372555)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ダパ語 / 危機言語 / 現地調査 / 言語地図 / 国際連携 / 記述言語学 / 地理言語学 |
Outline of Annual Research Achievements |
[1] データ収集とドキュメンテーション:白井は最新の出版物の入手、学会・研究打ち合わせ等における最新の研究資料の入手、内外の研究者との研究交流等、現地調査の代替的手段で、当該地域の言語に関するデータ収集を行った。研究協力者の黄陽(西南交通大学・准教授)は2020年7月に中国四川省甘孜チベット族自治州において18日間の現地調査を実施し、語彙データベースを提供した。データ入力を進め、ダパ語を含むチァン諸語の子音パターン、文法関係表示パターン、ダパ語における方向接辞と動詞の結合パターンのデータベースをそれぞれ作成した。 [2] ダパ語文法の包括的記述:ダパ語データから諸現象を分析し、文法記述を進めた。白井は主にダパ語北部方言について記述を進めた。ダパ語の体言化、名詞修飾構造および人魚構文といった一連の現象について分析を行い、それぞれに関する論文を国内論集および国際誌において公刊した。ダパ語の証拠性と自己性について新たな理論的展開を導入して分析し、国内学術誌に論文を公刊した。ダパ語のプロソディーと情報構造の関係について分析し、国際学会で口頭発表を行った。ダパ語における語彙の細分化について検討し、国内研究会において口頭発表を行った。黄陽はダパ語南部方言の関係節について分析を行い、中国の学術誌に論文を発表した。また、南部方言の参照文法の準備を進めている。 [3] ダパ語方言の歴史的形成過程の解明:動詞に前接される方向接辞について、ダパ語を含むチァン諸語における発達過程を地理言語学的観点から分析し、国際学術誌において発表した。また、ダパ語とギャロン語の機能的発達過程の対照研究を行った。ダパ語および周辺諸言語の否定辞を地理言語学的観点から分析し、論文として発表した。ダパ語を含むチベット=ビルマ諸語の文法関係表示の発達過程を地理言語学的観点から分析し、研究会において口頭発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
中国四川省において現地調査による方言データ収集を計画していたが、新型コロナウイルス感染拡大の影響で白井の渡航が現実的に不可能であった。現地の制度上、中国渡航後に経由地(北京または上海)と到着地(四川省成都市)の両方で各2週間の強制隔離が行われる上、調査地の医療体制が不十分なためである。従って現地での調査を中止せざるを得ず、調査は遠隔で限定的な内容にとどまった。そのため、方言対照データベース作成およびそこから方言特報を分析する作業が遅延している。ただし、研究協力者の黄陽が現地調査を行って方言語彙を収集した。また、白井の調査が行えなかったことの代替として、文法記述のための言語現象分析を予定以上に進捗させることができた。以上のことから、一次資料の不足を二次資料で補う形で研究を行うことができており、遅れはあるものの、全体としては小幅な遅延であると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
[1] データ収集とドキュメンテーション:現地調査によるデータ収集を行う。白井が主として中部~北部の方言群を、黄陽が南部方言群を担当し、現地調査を行う。黄陽は令和3年7月頃に3週間程度の調査を予定している。白井は渡航が現実的に可能になり次第、2週間程度の現地調査を行う計画である。語彙、文法、テクストの一次データを録音および音声記号・音韻転写による書き取りによって収集する。調査で得たデータのドキュメンテーションを進める。特に方言語彙対照データベースを作成する。白井が過去の調査で収集した北部方言および南部方言のデータもドキュメンテーションの対象とする。なお当初の計画では、3年目に方言語彙データの集約を行うこととしていた。しかし、これまで新型コロナウイルス感染拡大の影響で渡航を中止せざるを得ない状況が続いており、3年目の状況も不透明である。このため、方言語彙データベースについては規模を縮小して4年目に集約する計画である。なお、黄陽は中国在住のため南部方言群の現地調査を実施できる見通しである。 [2] ダパ語文法の包括的記述:過去の現地調査で得たデータを中心に分析を行い、文法記述を進める。今後特に焦点を当てるのは、類別詞や助詞といった機能語、文法関係の表示と情報構造や有生性との相関、情報構造とプロソディーの相関、超分節素の特性である。白井は主に北部方言の分析と記述を行う。黄陽は南部方言の参照文法を公刊する。 [3] ダパ語方言の歴史的形成過程の解明:一次資料と二次資料の両方を用いて、地理言語学的観点と比較言語学的観点の双方から分析を行い、言語特徴の形成過程の解明を目指す。文法関係の表示パターン、動物語彙、類別詞、音韻特徴について、周辺地域のチァン諸語やチベット=ビルマ諸語とも対照しながら形成過程を分析する。
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Causes of Carryover |
中国で現地調査によるデータ収集を行う計画であったが、新型コロナウイルス感染拡大の影響で渡航を断念せざるを得なかった。そのため、白井の現地調査に必要な旅費および関連消耗品の支出を次年度に回すこととなった。また、新たに収集したデータの入力をアルバイトで依頼し謝金を支出する計画であったが、同じ理由で新たなデータが収集できなかったため、謝金支出がなかった。 現地調査は、中国に渡航しての現地調査が現実的に可能になり次第、再開する予定である。従って、令和3年度中に自由な渡航が可能になれば年度内に現地調査を実施する。その際に次年度使用額分の旅費と消耗品費を使用する。また、データ入力については研究協力者である黄陽の提出するデータと合わせて、令和3年度中に可能な範囲での入力を行う。このため、令和3年度の黄陽の現地調査と報告が終了する8月以降に謝金を支出する予定である。
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[Journal Article] nDrapa2020
Author(s)
SHIRAI Satoko
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Journal Title
Handbooks of Comparative Linguistics
Volume: 6
Pages: 465-510
DOI
Peer Reviewed
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