2022 Fiscal Year Research-status Report
A descriptive study of endangered varieties of the nDrapa language
Project/Area Number |
19K00543
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
白井 聡子 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 講師 (70372555)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | ダパ語 / 危機言語 / 現地調査 / 言語地図 / 国際連携 / 記述言語学 / 地理言語学 / 方言 |
Outline of Annual Research Achievements |
[1] データ収集:白井は、現地調査の代替的手段で、当該地域の言語に関する二次的データ収集を行った。具体的には、最新の出版物の入手、学会・研究打ち合わせ・学術交流における最新の研究資料の入手、過去に収集したデータの整理である。研究協力者の黄陽(西南交通大学・准教授)は2022年7月に中国四川省甘孜チベット族自治州において現地調査を実施し、過去に報告がなかったダパ地区中部の村の調査結果を含む語彙データベースを提供した。 [2] ドキュメンテーション:データ入力アルバイトを依頼するなどして、ダパ語方言基礎語彙リストを拡充した。また、チァン諸語におけるキョウダイ語彙体系および数詞体系のデータを作成した。 [3] ダパ語文法の包括的記述:ダパ語データから諸現象を分析し、文法記述を進めた。白井は主にダパ語北部方言について記述を進めた。ダパ語の類別詞について英語論文を執筆、公刊した。黄はダパ語南部方言の類別詞に関する英語論文を公刊したほか、ダパ語南部方言の参照文法を完成させた(近刊予定)。 [4] ダパ語方言の歴史的形成過程の解明:白井と黄陽は[1], [2] で得られた方言語彙データに地理言語学的分析を加えて、2022年9月に行われたInternational Conference on Sino-Tibetan Languages and Linguistics 第55回大会において “A Geolinguistic Approach to nDrapa Dialectology”というタイトルで共同発表を行い、新たなダパ語方言区分を提案した。このほか、白井はダパ語を含むチベット=ビルマ諸語における数詞体系とその発達過程を地理言語学的観点から分析し、筆頭発表者として共同口頭発表を行った。また、キョウダイ語彙の発達に関する共同発表、動物語彙の発達に関する論文共著も行った。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
中国四川省において現地調査による方言データ収集を計画していたが、新型コロナウイルス感染拡大の影響で白井の中国への渡航が現実的に不可能であった。従って白井は現地での調査を中止せざるを得ず、調査は遠隔で限定的な内容にとどまった。ただし、研究協力者の黄陽が現地調査を行って方言語彙を収集した。このデータを用いて、当初の計画よりは小規模であるものの方言語彙データベースを概ね完成させ、その分析結果を国際会議において共同発表することができた。また、白井の調査が行えなかったことの代替として、関係研究者から語彙資料の提供を受けるなど、二次資料の収集を進めた。以上のことから、一次資料の不足を二次資料で補う形で研究を行うことができており、遅れはあるものの、全体としては小幅な遅延であると言える。 また、同じく新型コロナウイルスの影響により、当初予定されていた学会が2023年5月に延期された。このため、この学会の場における研究討議の結果を研究に反映させることが遅れている。
|
Strategy for Future Research Activity |
新型コロナウイルス感染拡大の影響で遅れた分の研究を2023年度に行う。 [1] ドキュメンテーション:調査で得たデータのドキュメンテーションを進める。特にテクスト資料のデータ化を進める。方言語彙対照データベースについては、チァン諸語との対照もできるよう拡充する。 [2] ダパ語文法の包括的記述:過去の現地調査で得たデータを中心に分析を行い、文法記述を進める。今後特に焦点を当てるのは、名詞句の定性や属格標識の機能の問題である。 [3] ダパ語方言の歴史的形成過程の解明:2022年度に口頭発表した方言区分や方言語彙の分布の実態について、さらに分析を進め、公刊する。また、チァン諸語を含む地理言語学的観点と比較言語学的観点の双方から分析を行い、言語特徴の形成過程の解明を目指す。
|
Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染拡大の影響により、研究成果発表を行う予定であった国際学会が2023年度に延期された。それに伴い、学会参加のための海外旅費、Proceedings作成のための英文校閲費など関連する費用を2023年度に使用することが必要となった。 2023年度の使用計画は、主に、学会参加に係る旅費、学会参加費、英文校閲費で、その他関連する消耗品費も使用する。
|