2020 Fiscal Year Research-status Report
「ペルシア語化」の諸相に関する類型論的研究―ワヒー語とクルド語の事例を中心に
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19K00546
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Research Institution | Tokyo University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
吉枝 聡子 東京外国語大学, 大学院総合国際学研究院, 准教授 (20313273)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 言語学 / 記述言語学 / イラン語派 / パミール諸語 / ペルシア語 |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度は,コロナウイルス感染の拡大防止に伴う諸状況により,研究作業の大きな変更を余儀なくされた。 年度当初は,ワヒー語の下位変種間の比較を目的として,夏期に,毎年継続調査を続けているゴジャール・ワヒー語分布地域の主要3村落に加えて,アフガニスタン側からの移住者が多く,ペルシア語(タジク語)からの影響を大きく受けていると予測される,ヤスィーン地域(パキスタン・ギルギットバルティスタン州,ゴジャール・ワヒー語の南西に位置)を対象として,言語調査票を用いた現地調査を予定していた。また,同年度冬期から春期には,イラン側クルディスターン地域において,クルド語中央方言および南方言に関する「ペルシア語化」が進む状況について,基礎調査を行う予定であった。 しかしながら,年度初めより,調査予定地(パキスタン・イラン)でのコロナウイルス感染拡大が確認され,またそれに伴う対象地域への渡航中止勧告が行われたため,以上の調査は全て中止せざるを得なかった。 このため,ゴジャール・ワヒー語については,現地インフォーマントとファイルのやり取りにより,なお未解明の文法項目(動詞go-/tsar-の使い分け等)について,出来る限りの聞き取り調査を行った。リモートによるインフォーマント調査も検討したものの,現地の通信状況が著しく悪いため断念した。クルド語については,次年度以降に繰り越しとする調査の準備段階を継続することとし,文献ベースでの基礎データ収集を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
上記の通り,コロナウイルス感染拡大とその防止に関する諸状況のため,計画2年度に予定していた,現地調査によるデータ収集およびその分析作業が行えなかった。このため,ゴジャールワヒー語に関する分析は比較的順調に進んでいるものの,ワヒー語下位方言間の比較と,クルド語についての研究考察については,計画より遅れている状況にある。
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Strategy for Future Research Activity |
海外渡航が困難な期間中は,できるかぎり,オンラインを使用したインフォーマントワーク(ファイルのやり取りが中心)と,文献によるデータ収集・分析作業を中心に行う。現地調査は,調査地への渡航が可能になり次第,再開を検討する予定。ただし,状況の改善が見込めない,または改善が当初予定より大幅に遅れそうな場合には,調査地および調査項目の変更(渡航が可能な調査地に関連する項目について,より重点的に研究考察する)や,研究計画の延長も視野に入れて,柔軟に対応していきたいと考えている。
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Causes of Carryover |
調査予定地でのコロナウイルス感染拡大および防止措置による渡航制限により,予定していた現地調査を全て中止したため。 2021年度は,海外渡航に関連する制限が緩和され,調査予定地のコロナウイルス感染拡大状況が改善され次第,現地調査の再開を検討する。ただし,2021年度は計画の最終年度にあたるため,再開時期が遅れ,当初予定の調査を今年度中に終了することが難しい場合は,調査地および対象調査項目の変更や,研究計画の延長申請も検討する可能性がある。
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