2020 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
19K00547
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
堀 博文 静岡大学, 人文社会科学部, 教授 (10283326)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ハイダ語 / 北米先住民諸語 / 所有構造 / 複文構造 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は,カナダのブリティッシュ・コロンビア州のハイダ・グワーイで話されるハイダ語の文法を解明することを主たる目的とするものである。本年度は,これまで自身が蒐集した資料や過去の先行研究などをもとに,所有構造と複文構造の基礎的記述と特徴の分析を試みた。 まず,所有構造について述べると,ハイダ語においては,親族名称や身体部位名称などに代表される譲渡不可能所有を表わす名詞とそれら以外の譲渡可能所有を表わす名詞に分かれ,そのそれぞれの意味的な違いに応じて異なった所有構造が現われる。歴史的に古いのは,無標示型の譲渡不可能所有構造の方であり,それから主要部標示型の譲渡不可能所有構造,更に,それが接語化して譲渡可能所有構造が現われたと考えられる。また,ハイダ語において所有構造にいくつかの型がみられるのは,元来,所有者と被所有者の名詞句のいずれにも所有関係を積極的に明示する標識がなく,両者が単に並置されることによって所有関係が表わされていたからであると考えられる。 一方,複文構造については,ハイダ語では,その従属節となる述語が,いずれの従属節標識が付くかによって,節としての自立性が低い名詞的なものから,完全な文としても機能しうる定動詞的なものなど様々な形式をとる。従属節標識で表わされる意味機能と従属節の自立性の違いの間に何らかの相関関係を見出すには至っていないが,一方で,連体修飾構造に現われる述語の形式との関係性を指摘することができる。今後は,連用修飾構造と連体修飾構造を統一的に説明する可能性を探ることが課題である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究課題を遂行するには,まず現地調査によって話者からハイダ語の文法に関する情報を直接聞き出したり,テキスト(自由談話)を蒐集したりすることが必要不可欠である。しかし,2020年度は,前年度に続き,新型コロナウィルスにより,現地調査を実施することができず,そのために話者から必要な情報を聞き出すことが不可能であった。そうした現地調査の缺を補うために,過去の資料などを駆使するなどの工夫も試みたが,やはりそれでも限界があることは否定できない。 以上の理由から,現在までの進捗状況は若干遅れていると判断せざるを得ない。
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Strategy for Future Research Activity |
調査地は,ハイダ・グワーイという島であるが,調査地においては,新型コロナウイルスのワクチンの接種が進んでいるものの,島外からの来訪者を受け入れるには至っていない。まずは,新型コロナウイルスの収束を期待するしかない。また,一方で,対面調査にかわる方法を考える必要がある。例えば,統語法に関しては,これまで自身が蒐集した資料に加え,過去になされた研究資料を活用するために,その整理と分析を確実に進め,現地調査の代替手段とすることも検討したい。
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Causes of Carryover |
2020年度も,新型コロナウィルスの影響により,現地調査を実施することができず,そのために当初計画していた旅費を使用することができなかった。2021年度においても現地調査を計画しているので助成金を次年度使用する。
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Research Products
(2 results)