2021 Fiscal Year Research-status Report
「移動」としての所有者句外置について:文と名詞句との平行性の観点から
Project/Area Number |
19K00548
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
綾野 誠紀 三重大学, 教養教育院, 教授 (00222703)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 統語論 / 所有者外置 / 上昇 / コントロール |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究プロジェクトでは、文レベルのコントロール構文(例: John expects to win)に相当する所有者句外置構文を同定し、移動分析を支持すると考えられる新事実を提示することを目指すと共に、文レベルでの上昇構文(例: John seems to win)に相当すると考えられる所有者句外置構文を同定し、その特性を明らかにすることも目的としている。後者のタイプの所有者句外置構文については、2013年以降、移動分析を支持する新事実が提示されている(Deal 2013, Kishimoto 2013)。2021年度は、Kikuchi (1994)により指摘され、Funakoshi(2017)により詳細な分析が提案された事実について検討した。対象となる事実では、所有者句が属格で表示され基底生成位置に留まっているにも拘らず、所有者句外置構文同様に、節内の浮遊数量詞や描写二次術語が認可される。このような事実についてFunakoshi (2017)は、コントロール構文の移動分析(Hornstein 1999, 2001)に基づき、所有者句移動の着地点に存在する非顕示的所有者句に起因すると分析している。関連する事実を検討した結果、所有者句が移動先位置と基底生成位置との双方で顕示化する場合、基底生成位置では属格代名詞として発音されることがわかった。この現象を文レベルでのコントロール構文との並行性の観点から見ると、当該構文がコントロール構造を有しているさらなる証拠として捉えることができる。本稿ではさらに、所有者受動文及び複合慣用述部における所有者上昇についても再検討を行い、それぞれコントロール構文である可能性についても示唆した。この研究成果を論文として刊行した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2021年度は、本研究プロジェクトの目的の一つである、コントロール構文に相当する所有者句外置構文を同定する為に、各種所有構文について検討を行なった。その中でも、所有者句が属格で表示され基底生成位置に留まっているにも拘らず、所有者句外置構文同様に、節内の浮遊数量詞や描写二次術語が認可される事実について検討した。検討の結果、コントロール構文と並行する特性があることが判明したと同時に、今後の課題も明確になった。研究の進捗状況としては、概ね順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度までの研究成果に基づき、2022年度は、コントロール構文に相当すると考えられる所有者句外置構文を同定することを目指した。所有者が非顕示的に外置されていると考えられる事実について再検討し、先行研究におけるコントロール分析を支持する事実を提示した。また他の構文についてもコントロール構文と考えられる可能性を示唆した。本研究プロジェクトの最終年度である2022年度は、これまでの研究成果を総括し、所有者句外置構文の移動分析とコントロール分析の判断基準を示したい。
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Causes of Carryover |
2021年度も引き続き、コロナ禍により調査研究旅費、成果報告旅費を支出することができず、また、それに係る物品購入もできなかった。2022年度に実施する計画である。
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