2022 Fiscal Year Research-status Report
「移動」としての所有者句外置について:文と名詞句との平行性の観点から
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19K00548
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
綾野 誠紀 三重大学, 人文学部, 教授 (00222703)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 統語論 / 所有者外置 / 上昇 / コントロール |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究プロジェクトでは、文レベルのコントロール構文(例: John expects to win) 及び上昇構文(例: John seems to win)のそれぞれに相当すると考えられる所有者句外置構文を同定し、新事実を提示することを目指すと共に、それらの所有者句外置構文の統語特性を明らかにすることを目的としている。前者のタイプの所有者句外置構文については、Funakoshi (2017)によって、また後者については Deal (2013)や Kishimoto (2013)によって新事実が提示されている。2022年度は、文レベルのコントロール構文内補文の統語特性を明らかにすることにより、コントロール構文に相当すると考えられる所有者句外置構文の被所有句の内部統語構造との並行性を検討することを目指した。そこで先ず、コントロール構文内補文の統語特性の中でも特に定形性及び補文のサイズについて考察した。関連する補文の中でも、形式名詞を主要部とする義務的コントロール構文内補文の統語特性について、主題化、最上級形容詞のスコープ解釈、各種副詞との共起に基づき検討した。その結果、義務的コントロール構文内補文は非定形の特性を示すこと、また、非義務的コントロール構文の補文との比較において、節サイズが小さいことを明らかにすることができた。さらに、上昇構文及びコントロール構文の補文内の非顕示要素の統語特性について、否定のスコープを用いることにより検討を行った。コントロール構文の補文の統語特性に関する研究成果については、国際研究集会において報告すると同時に、論文としても刊行した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2022年度は、コントロール構文とそれに相当する所有者句外置構文の統語特性の並行性について検討するために、コントロール構文の補文に関して、その定形性と節サイズの観点から検討し、研究成果を報告することができた。ただし、所有者句外置構文との並行性まで十分に検討することができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度までは、コントロール構文に相当すると考えられる所有者句外置構文を同定することを目指した。所有者句が非顕示的に外置されていると考えられる事実についても再検討し、先行研究で提案されている派生の問題点についても明らかにした。本研究プロジェクトの最終年度である2023年度は、上昇構文に相当すると考えられる事実を同定することを目指し、さらに、これまでの研究成果を総括した上で、所有者句外置構文の中でもコントール構文に相当するものと、上昇構文に相当するものとの判断基準を示す予定である。
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Causes of Carryover |
2022年度も引き続き、コロナ禍により調査研究旅費、成果報告旅費を支出することができず、また、それに係る物品購入もできなかった。2023年度に実施する計画である。
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