2019 Fiscal Year Research-status Report
Micro-variation of the subject properties in Bantu languages
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19K00550
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
米田 信子 大阪大学, 言語文化研究科(言語社会専攻、日本語・日本文化専攻), 教授 (90352955)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | バントゥ諸語 / 主語 / 主題性 / 国際共同研究 / マイクロバリエーション |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、アフリカ大陸赤道以南に広く分布するバントゥ諸語の主語のプロパティを比較し、類型化をすることである。初年度の2019年度は、①海外共同研究者との打ち合わせ、②主語のプロパティに関する質問票に沿ったデータの収集を行った。 ①については、7月末から約10日間、英国において、海外共同研究者であるHannah Gibson氏(エセックス大学)およびLutz Marten氏(ロンドン大学SOAS)と、最新のデータに関する情報交換、これまで収集してきたデータの確認、今後の研究の進め方等についての打ち合わせを行った。Gibson氏とは、コピュラ文および存在文における主語のプロパティに関する論文の共同執筆と2020年11月からの来日に関する具体的な計画についての打ち合わせも行った。また、2020年1月24日から2週間、同じく海外共同研究者である森本雪子氏(ベルリンフンボルト大学)を大阪大学に招聘し、質問票の質問項目の検討・修正、データ収集の進捗状況の報告、共同執筆および共同発表についての打ち合わせを行った。 ②については、2020年3月にタンザニアにおいて現地調査を行い、データ収集を行った。また国内外のバントゥ諸語研究者からデータ提供の協力を得た。調査項目は、(i)VS語順は容認されるか?容認される場合にはSMはどの要素との一致が可能か?/(ii)OVS語順は容認されるか?容認される場合にはSMはどの要素との一致が可能か?/(iii)場所名詞が文頭に置かれた場合にはSMはどの要素と一致することができるか?/(iv)基本語順SVOのままで主語のWH疑問文を作ることができるか?/(v)基本語順SVOのままで主語の後ろにとりたて小辞を続けることができるか、である。これまでにこれらすべてに関するデータが収集できた言語は17言語、部分的にデータが収集できている言語は7言語である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2019年度は、①海外共同研究者との研究打ち合わせ、②タンザニアでのデータ収集、③研究会での成果発表、を計画していた。 ①については、7月~8月に英国においてHannah Gibson氏およびLutz Marten氏と入念な打ち合わせを行うことができた。1月には本課題の中心的な共同研究者である森本雪子氏を大阪大学に招聘し、これまでに収集したデータを検討すると共に、主語のプロパティに関する質問項目の再検討を行った。また論文共同執筆、および今後の共同発表についての打ち合わせを行った。 ②については、2019年度はタンザニアで、マテンゴ語、スワヒリ語、ヤオ語、フィパ語のデータを収集する予定で、3月初旬にタンザニアに渡った。しかし世界的な新型コロナ感染拡大により、タンザニア村落部に行くことができず、都市にとどまらざるを得なかった。そのため、予定していた言語のデータを収集することができなかった。だが、7月に英国でロンドン在住のガンダ語話者からガンダ語のデータを収集することができたり、国内外のバントゥ諸語研究者からデータを提供してもらえるなど予定していなかった言語のデータを収集することができた。 ③については、3月中旬から森本氏をもう一度日本に招聘し、3月に開催される2つの研究会で共同発表をすることになっていたが、新型コロナ感染拡大防止の観点からいずれの研究会も中止となり、招聘も中止した。2019年度に予定していた成果の発表は行うことができなかったことは残念である。 想定外の事態によって成果発表や調査を「計画通り」には行うことができなかったが、共同研究者との研究打ち合わせのように計画以上に進んだところもある。またデータ収集に関しても、3年間の目標調査対象言語数20言語に対して初年度である現在17言語のデータが集まっている。これらのことから全体的に見ればおおむね順調であると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
申請書に書いた2020年度の研究計画では、①海外共同研究者たちとの研究打ち合わせ、②ウガンダ、ルワンダでのデータ収集、③成果発表、を予定していた。しかしながら、現在の新型コロナウィルスの世界的な感染拡大に伴って、かなりの部分で計画を立て直す必要がある。 ①については、2020年度はオンラインで行う。具体的には、現在進行中の論文執筆と2021年度の国際学会の共同発表およびその応募アブストラクト作成の打ち合わせを行う(6月に英国においてエセックス大学において国際バントゥ諸語学会が開催される予定であったため、学会の前後で海外共同研究者たちと研究打ち合わせを計画していたが、学会は2021年に延期になった。また11月から1ヶ月Gibson氏を大阪大学に招聘する予定であったが、これについても現在ペンディングとなっている。) ②については、8月~9月に渡航を予定していたが、これも現時点では未確定である。もし渡航が可能であれば、現地でニョロ語とルワンダ語のデータ収集、およびガンダ語とチガ語のデータ確認を行う。渡航ができない場合の準備として、研究協力関係にあるダルエスサラーム大学(タンザニア)とマケレレ大学(ウガンダ)の研究者に連絡を取り、オンラインでデータ収集に協力してもらえる母語話者を探す。また、数は限られているが、可能な限り文献調査を進める。 ③については、2020年6月にエセックス大学(英国)において開催予定だった国際バントゥ諸語学会は2021年に延期になったが、少なくとも国内のいくつかの研究会はオンラインで開催されることが決まっているため、2019年度の成果を中心に、森本氏と共同で発表する。また現在進行中の論文執筆を進める。 2020年度はさまざまな点で未確定の部分が多いが、調査対象の言語を変更するなど、柔軟に対応することで、データ収集のために最大限の努力をする。
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Causes of Carryover |
3月末に予定されていた研究会で共同研究発表をするためにドイツから共同研究者を招聘する予定だったが、新型コロナ感染拡大防止のために大阪府からの要請を受けて、それらの研究会が延期となった。そのため招聘するための旅費が未使用となった。これらの研究会は2020年度に開催されることになっているため、その旅費に充てる予定である。なお2020年度も共同研究のために招聘の旅費を予算に計上しているが、それは研究会とは時期が異なるため、別に考える必要がある。
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