2021 Fiscal Year Research-status Report
Evidentialityの形態的・統語的特徴に関する類型論的研究
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19K00551
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
岸田 泰浩 大阪大学, 日本語日本文化教育センター, 教授 (40273742)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | evidentiality / 証拠性 / 類型論 / アルメニア語 / コーカサス |
Outline of Annual Research Achievements |
Evidentiality(以下、Evidと略す)の研究においては、その意味論的側面が主流となっているが、本研究課題では、形態的側面と統語的側面に焦点を当て、それらの類型論的特徴を明らかにするのが目的である。その目的を達成させるために、本研究課題ではEvidの「候補形式」と呼ぶ形態的な表現類を中心に収集したデータとしてまとめ、それらと従来の文献の見解を突き合わせながら、Evidの形態的側面について通言語的・類型論的特徴の抽出および整理を行ってきた。 今年度(2021年度)は、これらの作業を継続しつつ、本研究課題のもう一つの柱であるところのEvidの統語的側面の考察にも着手した。形態構成にしても、統語構造にしても、言語間で差異(パラメーター)があり得ることも考慮しながら、類型論的一般化を目指さなければならない。さらに、統語構造の考察においては、形態構成の場合よりも膨大な言語データが必要となる。対象とする言語や議論は限定的ではあるものの、Evidの統語構造について論じた研究は増えている。本研究課題では、先行研究で提案されたさまざまな見解を参考にしながら、生成文法が提唱するCartographyを考察の枠組みとして援用し、本研究のきっかけとなった完了形に由来するEvidについて、その統語的特徴の分析に取り組んだ。具体的には、本研究代表者がフィールド調査の中心におくアルメニア語を取り上げ、Evidがどのような統語構造を有しているかを考察した。その成果の一部として、2021年度ユーラシア言語研究コンソーシアム年次総会において「Evidentialの統語構造について-アルメニア語の場合-」というタイトルのもと、Evid素性と時制素性との相関、他の動詞活用形との類似点及び相違点、完了分詞と結果分詞の位置づけ、東と西のアルメニア語の相違点などに関する提案を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
Evidの「候補形式」について記述・分析した文献が当該形式にEvidの用法が(どの程度)あるかについて言及しているとは限らず、それを確認するためには言語コンサルタントの協力、すなわち、当該言語の母語話者に対する調査が不可欠である。しかしながら、新型コロナウイルス感染症 (COVID-19)の広がりによる行動制限等で、2021年度もその調査の遂行が困難であった。さらに、Evidの統語構造を理論言語学の観点から分析するためには緻密で多様なデータの考察が必須であり、言語資料等の収集およびフィールドワーク調査を広範に実施する計画であったが、こちらもCOVID-19の影響で海外出張が叶わなかった。統語構造に関するデータや分析が不十分であったため、予定していたEvidの統語構造と形態構造の相関性に対する理論的考察を進めるに至らなかった。当初計画では今今年度が最終年であったが、研究の進捗が遅れているため、期間延長申請を行い、承認された。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画では、今年度が最終年であったが、事業期間の延長が承認されたため、次年度も研究課題を継続する。海外へ出向いての調査は、年度前半(8月か9月)に実施する必要があるが、それが実現できるか否かは現時点ではいまだ不透明であり、文献資料の考察と分析に研究の中心を据えつつも、現地調査の機会も待ちたい。また、来日できる留学生も増えてきていることから、言語コンサルタントへの対面調査も可能な限り行っていきたい。2022年度は、Evidを統語的機能範疇としてどのように位置づけるべきかを考えるための先駆的考察として、研究代表者が従来、研究対象としてきたアルメニア語やグルジア語を軸にして、それ他の言語を扱った先行研究の知見も活用しながら、Evidの統語的側面に分析の焦点を置く。アルメニア語のEvidの統語構造については、すでに考察を始めているところであるが、完了形・Evid以外の動詞活用も取り込み、分析をさらに進めていく。分析手法としては、Cartographyの枠組みを援用する。また、形態構成と統語構造との相関性について、今年度は十分に考察することができなかったが、次年度は分散形態論(Distributed Morphology)のアプローチによる考察を試みたい。研究成果については、国内外の学会やCSEL (Consortium for the Studies of Eurasian Languages)が発行する刊行物等によって公表するとともに、CSELウェブサイト、Academia.eduやResearchGate等の研究者向けSNSサービスも活用する。
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Causes of Carryover |
COVID-19 の影響を受け、海外へ赴いてのフィールド調査ができず、学会も多くがオンラインであったため、旅費が使用できなかった。また、母語話者である留学生も来日が困難な時期が続き、言語コンサルタントに対する謝金も使用するに至らなかった。今年度は当初計画の最終年度であったが、研究の進捗状況も芳しくなかったため、事業期間の延長を申請し、承認された。次年度は、継続して文献資料を収集し、その考察と分析を中心に据えつつも、言語コンサルタントとはオンラインも積極的に活用しながら協力を仰ぐことで謝金の支出を見込むとともに、海外での調査や国際学会での成果公表の機会を持ちたい。
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Research Products
(1 results)