2019 Fiscal Year Research-status Report
A micro-typological study of inter-parametric covariation in Bantu languages
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19K00568
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Research Institution | Tokyo University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
品川 大輔 東京外国語大学, アジア・アフリカ言語文化研究所, 准教授 (80513712)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | バントゥ諸語 / ミクロ類型論 / 形態統語論 / 類型間連動関係 |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年度は,当初計画どおり8月から9月にかけてキリマンジャロ州モシ・ルーラル県において,ウル語(Uru, Bantu E622D)を対象とした,類型的に微細な形態統語的特徴に関する言語調査を行った.とくに,否定(negation)と焦点(focus)の標示に関する項目を中心に調査を行ったが,その過程で,専ら時制・アスペクト(TA)概念が標示される動詞内の構造的位置において,「累加(additive)」ないし「事態の再発(event recurrence)」といった焦点概念を標示する形態素が生じている事実が明らかになった.この形態素 we- は,周辺のキリマンジャロ諸語のTA体系に関する先行研究(Nurse 2003)において「変則的(anomalous)」(Nurse ibid.: 77)と指摘されている形式であり,この謎を解く鍵を提供する記述的発見と言える.一方で,否定や関係節といった環境では現れることができないという we- の形態統語論的ふるまいは,Hyman and Watters(1984)などが「内在的フォーカス(inherent focus:概念的にフォーカス性を帯びる文法カテゴリー)」と言及する機能を標示する形式が見せる通バントゥ諸語的な特徴と軌を一にする点で,アフリカ諸語類型論上も興味深い現象である.この記述的発見については,国内での記述言語学に関する研究集会において既に報告するとともに,2020年6月に英国エセックス大学での開催が予定されていた第10回国際バントゥ諸語学会(8th Interneational conference of Bantu languages, Bantu 8)において,バントゥ諸語ミクロ類型論の文脈に位置付けて発表することになっている(採択済,ただし現今のcovid-19をめぐる状況から学会自体が2021年に延期).
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2019年度までの進行状況としては,概ね当初計画どおりに進捗しているとみてよい.上述の「概要」に示したとおり,計画した調査は無事遂行され,それによって得られた成果の一部は,すでに国際的な発信に向けた準備が整っている.また,関連するプロジェクト(とくにAA研共同利用・共同研究課題「バントゥ諸語のマイクロバリエーションの類型的研究(2)」,学振拠点形成事業「アフリカにおける言語多様性とダイナミズムに迫るアフリカ諸語研究ネットワークの構築」)との相互作用が,本研究課題における研究内容の精緻化および一般化,また成果の国際的研究ネットワークでの発信といった点で望ましい効果を発揮している.
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Strategy for Future Research Activity |
現今のcovid-19の世界的拡散に起因する社会状況によって,研究計画を抜本的に見直す必要が生じている.本研究計画においては,アフリカにおける現地調査と,その成果の国際学会での発信とを主要な研究活動とするが,いずれに関しても2020年度中に再開できる目処が立っていない.したがって,研究活動としては,すでに収集した言語データの電子化を含めた処理と分析に力点が置かれることになろう.また,成果発信については,その機会が計画どおりに得られない状況が続くことも念頭に入れつつ,収束後の状況に遅滞なく対応できるよう準備を進める.その意味で,「進捗状況」欄に示した関連プロジェクトとより連動的な成果発信を行っていく.
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Causes of Carryover |
当初使用額に満たない部分の残額については,次年度におけるデータ処理ないし成果発信のための謝金の一部として執行を予定する.
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