2020 Fiscal Year Research-status Report
Identifying innate grammatical principles using the parameter-setting approach to grammar acquisition
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19K00569
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
藤井 友比呂 横浜国立大学, 大学院環境情報研究院, 准教授 (40513651)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田村 直良 横浜国立大学, 大学院環境情報研究院, 教授 (20179906)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 刺激の貧困 / 文法獲得 / 間接証拠 / 句構造規則 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、句構造獲得の問題をパラメタ曖昧性の問題として定式化し、対子供発話に照らして、刺激の貧困状態があるかどうかを決定しようという試みとしてスタートした。しかし、2019年度後半から、当該分野における進展を鑑み、間接証拠に関する研究を開始した。伝統的にパラメタ設定が直接証拠を引き金として考えらているのに対し、近年は間接否定証拠を含む間接証拠の研究が進んでいる。本研究課題も、その流れを追い、2020年度は、藤井(2020)を公表した。この論文は、日本語のwh疑問詞と疑問接辞の依存関係に対する制限という現象をとりあげ、対子供発話コーパスを用いて、ダレ、ナニ、ナゼの3種類の疑問詞に限ってであるが、正規位置の分類を行った。結果、一般的に言われている大人の容認度判断におけるそれよりも、主にダレの生起領域が制限されていることが分かった。このことは、もし子供がwh語の生起制限をデータから学んでいるとしたら、誤った一般化へ導く分布である。このことから項目の低い生起確率に頼った間接学習は起こっていないことが示唆される。 次に、元来のトピックである句構造規則の獲得研究にも、間接学習の観点から立ち返ることができた。成果は、Fujii and Yamashita (2021)として公表した。具体的には、動詞と補文標識が構成素をなす日本語の文法となさない文法を1例ずつとりあげ、先行研究(Perfors et al. 2006, 2011)の評価尺度を援用して、句構造文法の比較を実施した。当初的な結果として、動詞と補文標識は構成素を無さず、補文標識が文(S)と結びつく伝統的な統語構造のほうが高く評価されるという結果が得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2019年度後半から分野の動向を鑑み、当初考えていた直接証拠にもとづいた文法獲得だけでなく、間接証拠にもとづいた獲得に関する研究を進めた。ただし、上述の成果は、まだコーパスの分析(=それぞれのwh語の出現環境の頻度分析)にとどまっており、獲得モデルでもって示すところまでは至っていない。そこが今後査読付きの成果へつなげられるかのハードルとなろう。 また、これも上述のように、2020年度には、もともとのトピックである句構造規則の獲得研究にも立ち返ることができたことも収穫であった。ここで出てきた問題は、文脈自由文法が正しい形式化なのかという理論的には80年代から喚起されている興味深い論点で、次年度につながる論点となる。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、1つには、間接学習の関連で推進した、対子供発話におけるwh疑問詞の分布に関する研究を、獲得モデルの提案のレベルまで引き上げる必要がある。具体的には英語のwh依存関係に対する島の制約の獲得モデルを援用して、制約の獲得が成功しないことを示すことが目標になる。時間がかかる対子供発話データのコーディングを早く、間違いなく終わらせられるかがポイントとなろう。 一方、句構造獲得においては、文脈自由文法を前提にこれまで研究を進めてきたが、文脈自由文法が持つ理論的限界が獲得研究にも反映していると考えられる。その点を改善するために、基底に想定する句構造理論としてミニマリスト・グラマーを採用し、獲得モデルに埋め込むことを目指す。80年代の句構造理論の問題点はたびたび指摘され、新しい提案がなされてきたが、文法獲得モデルを探究するなかでそれらの提案が生きることになれば、非常に興味を引く事例となると思われるので、進めたい。
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Causes of Carryover |
コロナ禍で国内外の学会がオンライン開催となったため、旅費が発生しなかった。21年度も外国出張は現時点では目処が立たないが、国内旅費、滞在費として使用する可能性を探りたい。
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Research Products
(9 results)