2019 Fiscal Year Research-status Report
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19K00572
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
安田 麗 神戸大学, 大学教育推進機構, 講師 (60711322)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 複言語教育 / 音声習得 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和元年度は,本研究の中核となる学習実験のための教材作成に向けて,予備実験を行った.予備実験はつづり字が学習者の発音にどのような影響を与えるかを調べるために,日本人ドイツ語学習者を対象に音声生成実験を行った.実験方法は先行研究を再検討し,文字インプットの影響を考慮した発音課題を絵を用いて本研究に即するよう応用した.音響分析の対象としたのは,語末閉鎖音/d/と/t/の発音であり,文字提示がある場合と文字提示がない場合のドイツ語と英語の語末閉鎖子音の発音の実態を明らかにすることを試みた. その結果,ドイツ語の発音では個人差はあるものの,文字提示ありの場合と文字提示なしの場合で発音に違いがあることがわかった.具体的には,語末閉鎖子音の閉鎖区間の長さの差が,文字提示ありの場合の方が大きく,文字提示なしの場合の方が小さかった.差が小さいということはペアの2語の発音の差が小さく,中和の度合いがより強いといえる.したがって,文字提示なしの場合,つまり文字インプットがない場合の方が,文字と発音の結びつきに影響されることが少なくなり,/d/と/t/のペアの語の閉鎖区間の差が小さく,語末子音 の中和の度合いがより強くなっている可能性があることがわかった.英語の発音では,文字提示の有無にかかわらず発音に大きな違いはなく,個人差もほとんど見られなかった.これらの結果より,英語の文字表記と発音はすでに定着しており発音に文字インプットの有無による影響は少ないが,ドイツ語の文字表記と発音は定着が十分ではなく, 第一外国語である英語の文字表記と発音に影響され,文字インプットの有無によって発音に影響がみられたと推測する.今後,文字提示の有無に音声も加えてさらに予備実験を行うこと,実験参加者を増やし学習経過を観察するための教材作成の準備を進める計画である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題の進捗状況はおおむね当初の研究計画の通りである.令和元年度は予備実験を行い,予備実験の結果を踏まえ令和2年度は更なる修正を加えた生成実験を日本人ドイツ語学習者を対象に実施する.さらに,学習教材と学習効果の検証のための教材作成を進め,日本人ドイツ語学習者を対象に継続的に学習効果を見るための学習実験を実施し,縦断的データの収集を行う.収集した音声データの音響分析も並行して行い,結果をまとめる.ドイツ語母語話者による聴取実験も実施し,学習者の発音が学習法によってどのように変化するかを観察する.
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Strategy for Future Research Activity |
令和2年度は,学習実験の実施と結果の分析,聴取実験の準備と実施に力を入れる.学習実験では日本人ドイツ語学習者を実験群と統制群に分け,予備実験で得られた結果をもとに作成した発音練習を行ってもらう.発音課題の音声を収録し,得られた音声データを音響分析する.さらにドイツ語母語話者による聴取実験を行い,発音の正しさや自然性の評価を行う.聴取実験のための音声サンプルの音響的妥当性の判断や実験協力者の募集について,研究協力者に助言と協力を求める. 令和3年度は,学習実験により得られたデータと聴取実験により得られた音声評価のデータすべてを総合考察し,研究の総まとめを行う.研究によって得られた成果を論文にまとめる.さらに,音声指導教材の開発を行い複言語教育のための効果的な指導法の開発へと発展させ,今後の研究に繋げていく予定である.
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Research Products
(2 results)