2019 Fiscal Year Research-status Report
Research on translatability and translation methods of role language and character language
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19K00574
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
金水 敏 大阪大学, 文学研究科, 教授 (70153260)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 役割語 / キャラクター / 翻訳 / 村上春樹 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和元年度は、以下の論文を公刊した。(1)金水 敏 (2019) 「第六章 アニメキャラクターの言葉」田中牧朗(編)『現代の語彙:男女平等の時代』朝倉書店、 (2) 金水 敏 (2019)「村上春樹作品と日本語史の共鳴:『騎士団長殺し』騎士団長の「あらない」再考」中村三春(監修)・曽秋桂(編集)『村上春樹における共鳴』淡江大学出版中心。また、本研究経費によって『村上春樹翻訳調査プロジェクト報告書』(3) を刊行、大阪大学リポジトリよりオープン・アクセスで公開した。 2019年7月20-22日には、第8回村上春樹国際シンポジウム『村上春樹文学における「移動」(Movement)』(北海道大学札幌キャンパス 人文・社会科学総合教育研究棟)に参加し、「基調講演3」として「村上春樹と方言について―登場人物・作家の移動と痕跡―」を発表するとともに、パネルディスカッション「村上春樹における「移動」(movement)」に参加して発言を行った。 また、2019年11月30日には「フィクションの話し言葉を考える-役割語を軸として-」という講演を安田女子大学日本文学会学術講演会で行った。2019年12月20日には、「日本語ポップカルチャー作品の言語の特徴:ジブリアニメを例に」という特別講義を明治大学国際日本学研究科で行った。 研究社ウェブマガジン『〈役割語〉トークライブ!』を引き続き公開した。金水の執筆担当としては、第12回(4月)、第13回(5月)、第14回(6月)、第15回(7月)、第16回(8月)、第21回(令和2年1月)がある。本連載の内容は令和2年度以降に書籍化される予定である。 その他、本研究費の予算により、大阪大学豊中キャンパスにおいて役割語研究会を2回開催した(2019年7月24日および2019年10月30日)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和2年度は、ウェブマガジン『〈役割語〉トークライブ!』を主たる発表の場として役割語、キャラクター、翻訳に関する考察を深めてきた。また村上春樹国際シンポジウム、安田女子大学日本文学会、明治大学特別講義などでその成果を発表し、意見交換等を通じて視野を広げ、理論の深化を図ることができた。研究コミュニティとしての「役割語研究会」も2回開催することができ、活発な議論が得られた。1年間のまとめとして、『村上春樹翻訳調査プロジェクト』の第3号も刊行・公開することができたので、計画以上の進展が見られたと評価したいところであるが、2020年3月に予定していたヨーテボリ大学(スウェーデン)での講演、UCLA (USA) でのシンポジウム、役割語研究会が新型コロナウィルス感染防止の観点から中止せざるをえず、討議の場が失われた点はまことに残念であった。以上の点から、トータルとしては、ほぼ順調な進展と評価できると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
当面、『〈役割語〉トークライブ!』の書籍化・刊行に向けて準備を進めていく。 なお、本来であれば、役割語研究会を3-4回は実施し、村上春樹国際シンポジウムへの出席(台湾)、3月から延期されたヨーテボリ大学での講義(スウェーデン)の実施、UCLAでのシンポジウム(アメリカ)等への参加等によって国際的な議論を深める予定であったが、新型コロナウィルスの影響によってはこれらの予定が勧められるかどうかは極めて不透明である。次善の策として、シンポジウム、研究会等のオンライン実施も視野にいれて、研究コミュニティの活性化に注力する予定である。 なお、理論面では、ヴァーチャルな人格としてのキャラクターをハブとして、言語やその他の属性が束ねられて認識されるという現在のキャラクターのモデルを軸として、フィクション理解や現実社会への投影等の現象についても考察を一層深めていく予定である。
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