2021 Fiscal Year Annual Research Report
Research on translatability and translation methods of role language and character language
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19K00574
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
金水 敏 大阪大学, 文学研究科, 教授 (70153260)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 役割語 / 翻訳 / キャラクター / 村上春樹 / 小説 / フィクション |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、日本語を軸言語とし、主としてフィクションの翻訳に焦点を当て、日本語から他言語へ、他言語から日本語へと翻訳される際の技法について、個別の作品の分析を通じて一般化を試みるということを目標としている。具体的には、日本語から他言語への翻訳の例として村上春樹の長編小説作品を取り上げることとした。直接的に村上作品を対象とした研究は、2019年度には作品に現れる関西方言を取り上げてその機能を考察することをした。2020年度は、『騎士団長殺し』に現れる「あらない」という語法を取り上げ、その歴史的由来について調査し、また小説における機能を考察した。2021年度は、『騎士団長殺し』に登場する「騎士団長」のキャラクターを分析した上で、話し方全体にそのキャラクターがどのように反映されているか(いないか)という点について考察し、さらにその英語訳・中国語訳の実態について調査した。その結果、原文では老人語的要素が強く表れているのに、英語訳ではその点は明瞭ではなく、軍隊語的な要素が指摘できること、人称の表現について『海辺のカフカ』と同様の工夫が見られることなどを明らかにした。これらの研究成果は、『村上春樹翻訳調査プロジェクト報告書』の(3)ー(5)として、研究協力者の論文とともにまとめ、大阪大学リポジトリOUKAにおいて公開している。また逆に、村上春樹小説における翻訳語の影響についても調査・検討をしつつあるが、この点についての論文公表は今後の課題となる。 研究の基盤となる「キャラクター」の理論的考察についても進展があった。《キャラクター》を人物の属性全般とし、その一部の言語的特徴として役割語・キャラクター言語が位置付けられること、また人物の唯一性を担う要素を《人格》として取り出し、《人格》と《キャラクター》が一体となって「インディビジュアル」(登場人物)が形成されるという考え方を示した。
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Research Products
(14 results)