2023 Fiscal Year Annual Research Report
Analysis of Resultative Verbal Compounds in Japanese and Chinese with emphasis on Viewpoint and Subjectivity in both Languages
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19K00581
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Research Institution | Kobe City University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
下地 早智子 神戸市外国語大学, 外国語学部, 教授 (70315737)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 視点 / 主観性 / 主体性 / 時間認識 |
Outline of Annual Research Achievements |
2023年度は、中国語と日本語における「視点」と「主観性・主体性」と時間認識に関するこれまでの考察をまとめ、学会における口頭での講演一本と論文を一本発表した。 学会における口頭での講演では、時間指示(時間詞、テンス・アスペクト標識)において、語彙や項目の選択に見られる日中の相違を確認し、その背後には、対象を指示するための参照点の取り方の相違が一貫して働いていることを指摘した。 論文では、ともに既然の事態をマークするように見える“了”と“的”が、双方ともに動詞の直後に置かれる場合と文末に置かれる場合において、並行的に情報の取り扱い方に関係していることを指摘した。すなわち、“了”と“的”が動詞の直後に置かれる場合、前者は動作そのものの実現を新情報としてマークするが、後者は動作そのものを旧情報として背景化しその付帯状況に際立ちを与えるものである。一方、“了”と“的”が文末に置かれる場合、前者は対話の現場に新規の命題情報を位置付けるものであり、後者は命題情報を既定(新規ではなく)の確定的な情報として位置付けるものである。 文末の“的”は日本語の「のだ」文に相当するとされるが、前者は基本的に焦点構文であり、後者は広くモダリティやメタ言語的用法を発達させていることから、双方の機能は必ずしも対応していない。形式的には対応する両者の機能上の差異は、中国語が情報構造を、日本語が話し手の主観を、文法により色濃く反映させる言語であることを示している。
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