2021 Fiscal Year Research-status Report
Experimental syntax and psycholinguistic investigation of unaccusativity
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19K00586
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Research Institution | Tsuda University |
Principal Investigator |
小野 創 津田塾大学, 学芸学部, 教授 (90510561)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 日本語 / 非対格動詞 / 文理解 / 統語論 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度得られた成果に基づき、追加の実験をすることができた。具体的には日本語の非対格性に対して「動作主の意図性」というものがどの程度一般的な影響を与えるのかについて検証した。研究室の大学院生の協力を得て、動作主の意図性が明確な場面において動詞句内の数量詞の作用域がガ格名詞句のそれよりも広くなるかどうかについて、心理言語学的実験を実施した。どのような数量詞を使うかに関して多角的な観点から検討した結果、ガ格名詞句には「誰か」や「何か」を使い、動詞句内の数量詞に「どのN(例:どの大学、どの建物)」というタイプの数量詞を使った。昨年度得られた実験結果を支持する形で、意図性を明確にした場合には作用域を逆にすることが難しくなるという結果を得ることができた。これは意図性を高めると、一見非対格動詞のように思われる自動詞が非能格動詞として振る舞うことを示唆し、意図性という意味的な情報が日本語の非対格性にとって大きな役割を果たしていることが窺える。一方で、動詞の意味タイプによる差異も検出された。具体的には、位置変化や状態変化を示す動詞は似た振る舞いを見せたのに対して、状態動詞は期待していた効果が見られなかった。意図性が高い方がそもそもの統制条件において容認度が高いという結果が見られ、それは状態動詞の持つ意味的な特性とはやや不一致だと思われる。この点については、日本語の状態動詞の特徴について追加で調査が必要である。一般的に数は多くないとされる状態動詞であるが、それぞれの動詞の意味的特性をもう少し明らかにすることで、今後の理論的提案を精緻にできると考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
昨年度に比べて、新型コロナウイルス感染症による様々な制限が緩和された。それによりある程度研究が進めやすくなった部分があるが、リモートで多くのことを行わざるを得ないことにより、一つ一つの作業の進捗が思ったほど得られていない。また、研究者同士の交流も以前程は回復しておらず、その点も影響がある。
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Strategy for Future Research Activity |
コロナウイルス感染の危惧が拭えず、様々な制限がかかっている状況であるので、事象関連電位計測実験は引き続き難しいと考える。一方で2022年度はサバティカルをもらったため、論文執筆などの時間が増えると期待される。
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Causes of Carryover |
海外で行われる学会に参加することができなかったため、旅費への支出がなかった。また、その他謝金なども実験が未実施のものが発生した。
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