2019 Fiscal Year Research-status Report
A study of demonstratives in Ryukyuan languages: Toward an elucidation of Proto-Japonic
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19K00589
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Research Institution | Fukuoka University |
Principal Investigator |
衣畑 智秀 福岡大学, 人文学部, 教授 (80551928)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
林 由華 大学共同利用機関法人人間文化研究機構国立国語研究所, 言語変異研究領域, 特別研究員(PD) (90744483)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 指示詞 / 直示 / 照応 / 琉球諸方言 / 上代日本語 / 日琉祖語 |
Outline of Annual Research Achievements |
琉球諸方言には二系列の指示詞を持つ方言と三系列の指示詞を持つ方言が存在する。しかし、それぞれの指示体系の実態がどのようなものか、また二系列指示体系と三系列指示体系がどのような歴史的関係にあるのかは明らかになっていない。本研究では琉球諸方言の指示体系について、直示用法・照応用法の調査を行い、その実態を明らかにするとともに、どのような祖体系からそれぞれの方言が変化してきたのかを明らかにし、また同時に、古代日本語の指示体系と比較することで、日琉祖語の指示体系にも迫っていく。 このような研究の目的のもと、本年度は宮古諸方言の指示体系の調査をもとに、琉球諸方言でどのような指示体系の歴史変化が起きたのかについて論じた論文を執筆した。また、この論文では、部分的ながら、上代日本語の指示体系についても先行研究をもとに記述し、日琉祖語の指示体系についても提案を行った。その結論部分について述べると、宮古諸方言からは、その祖語の体系として、直示にku-とka-の二系列、照応にu-の一系列の体系を建てることができ、現在のところ、宮古伊良部方言がその祖体系に近いというものである。また、上代日本語も、直示にko-とka-、照応にso-という対立を持つ体系であり、体系自体は、宮古祖語やそこから措定される琉球祖語と近いものであるとした。 この論文は、いわば本研究の枠組みを示すものであり、それを示したことは大きな成果だと言えるが、特に宮古以外の琉球諸方言の調査については、今後の課題となっている。そのため、本年度は、この枠組みを各方言の記述に落とし込むための調査項目を策定し、研究分担者、研究協力者と十分に知識を共有するべく打ち合わせを行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は研究計画の初年度ということもあり、各方言の調査を行うよりも、まずは指示詞調査の概念や方法について、研究代表者、分担者、協力者の間で、十分に知識を共有することが目的であった。その事前準備として、本研究計画の枠組みを示す論文を執筆し、そこから、どのような調査が必要かを話し合うことができたため、初年度としては順調に進んでいると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、本年度執筆した論文を基本線として、各方言の調査を行っていく必要がある。本年度の打ち合わせでは、各方言の指示詞の直示用法として、話し手と聞き手の間に視点対立がある場合とない場合に分けて調査し、指示対象の位置を変えたり、指示対象を比較したりして、調べることとした。また、照応用法では、話し手・聞き手で共有されているか否か、どこに実在するかで文脈を制限した調査を行うこととした。合わせて、後方照応や記憶指示についても調査が必要であることを確認した。その上で分担者の林が与那国、沖縄辺土名、協力者の新永が奄美宇検村、久高、同じく原田が黒島、新城島の調査を行うこととし、衣畑は西表、白保の調査を今後進めることにした。今後は、それらの方言を調査しながら、本年度執筆した論文で仮定した琉球祖語の祖体系に近い指示体系を持つ方言はあるか、同論文で仮定した歴史変化に沿う変化が見られるか否かを議論していくこととした。
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Causes of Carryover |
本年度は、論文の執筆を中心に研究を進め、琉球諸方言の調査については、論文執筆に必要な宮古方言のデータ採取にとどめたため、予定したほどの旅費の出費がなかった。来年度以降、分担者、協力者の調査旅費を支出するため、次年度使用額はその中で使用することになる。来年度は、協力者の新永が奄美宇検村、原田が黒島の調査に行く予定であり、旅費の支出が多くなるものと見込まれれる。
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Research Products
(1 results)