2021 Fiscal Year Research-status Report
多義語に対するプロトタイプ義の量的分析-クラウドソーシングによる大規模調査-
Project/Area Number |
19K00591
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Research Institution | National Institute for Japanese Language and Linguistics |
Principal Investigator |
西内 沙恵 大学共同利用機関法人人間文化研究機構国立国語研究所, コーパス開発センター, プロジェクト非常勤研究員 (00804486)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
加藤 祥 目白大学, 外国語学部, 専任講師 (40623004)
浅原 正幸 大学共同利用機関法人人間文化研究機構国立国語研究所, コーパス開発センター, 教授 (80379528)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 多義語 / プロトタイプ的意味 / 心理実験 / 類似度評定 / 現代日本語 / 形容詞 / 派生関係 / クラウドソーシング |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は現代日本語形容詞の多義語を対象に,心理実験的手法を通してプロトタイプ的意味を認定し,多義モデルを構築することを目的としている。本研究の新規性は,双方向評定によるプロトタイプ的意味認定の手法の確立にある。プロトタイプ的意味と派生的意味は,基本義と拡張義ともいわれるように,その方向性とともに論証されている。語義間の類似性が認められやすい方向に着目し,心理実験の結果からプロトタイプ的意味及び派生関係を解明する。調査手順としては,先行研究の代表義リストと意味情報付与コーパスを統合的に活用しながらクラウドソーシングで双方向評定を調べる。多義語の記述を再現可能な調査をもとに行うことを目指す。 本年度は昨年度に引き続き,均衡コーパスの用例間における双方向類似度をクラウドソーシングにより大規模調査し,結果を生データ・集計データ・デンドログラムとして公開した。また多義語の実態を明らかにする手法として類似度が活用可能な範囲を,言語学的なテストと比較して検討を進めている。本年度は下の研究実施計画のうち,主に(iii)に取り組んできた。 (i) 2019年度:調査の設計・調査データの作成・基礎データの公開 (ii) 2020年度:クラウドソーシングの調査・調査結果を順次公開 (iii) 2021年度:双方向類似度データの分析 類似度を基準とした複数の語義に対する派生関係の検討では,言語学的なテストと比較して,抽象的な語義に区分が設けられる傾向がある。一方でプロトタイプ的意味の認定には本調査の結果が量的データとして役立てられる。本年度は語義間の関係を中心に調査を行い,分析を進めてきた。他方,項構造や構文といった文法との関係をモデル構築に取り入れることで,本研究の目的がより精緻に達成できる。このことからさらにデータを拡充しつつ,次年度も分析を続ける。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年度は調査を進め,調査結果をより詳細に分析・検討した点で一定の進展があったといえる。 一方で,語の多義性と文法的な側面との関係という重要な課題が残されており,モデル構築に遅れが見られている。
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Strategy for Future Research Activity |
クラウドソーシングを用いて実施した調査の結果を分析し,モデル構築に取り組む。またその成果を論文として発表できるよう,執筆を進める。必要に応じて, 追加調査を行う。
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Causes of Carryover |
研究をより精緻に達成するために補助事業期間延長を申請した。前年度に引き続き,COVID-19の影響で現地参加が叶わなかった学会・研究会があったため,旅費に次年度使用額が生じている。 分析を進め,必要に応じて追加調査を行い,研究内容を充実させる。
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Remarks |
クラウドソーシングを通して実施した調査の結果を生データ・集計データ・デンドログラムとして公開している。
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