2019 Fiscal Year Research-status Report
朝鮮語の閉鎖音に関する音声学的方言類型論研究:慶尚道方言の事例
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19K00597
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
山崎 亜希子 早稲田大学, グローバルエデュケーションセンター, 准教授(任期付) (80821850)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 慶尚道方言 / アクセント / VOT / F0 / 高周波数帯域の強度 / 平音 / 激音 / 濃音 |
Outline of Annual Research Achievements |
当該年度は、研究対象である朝鮮語慶尚道方言のうち、大邱方言・釜山方言の若年層話者(20~30歳代)を対象に発話実験を行った。 1)まずはパイロット調査として大邱方言話者(1名)から収集した録音データを基に、これまでソウル方言分析に採用してきた方法(実験語、枠文、実験時の指示など実験実施方法、分析箇所とその方法論など)が慶尚道方言にも適用できるかを検討した。その結果、慶尚道方法の方言特性を考慮し、実験方法(実験語リスト、被験者へのサジェスチョン)に一部改編を加えた。 2)韓国国内の録音スタジオ数か所にてテスト録音を行い、同質のレベルでデータ収集できる録音環境を整えた。 3)分析は、大邱方言話者(2名)と釜山方言話者(1名)による発話データを対象に行った。各話者個人の体系を知ることに焦点を当て、話者個人内で発声タイプの異なる3系列子音(平音、激音、濃音)の違いによって現れる音響的特徴について、3つの音響パラメータ(VOT、F0、子音区間の高周波数帯域の強度)を用いて観察、記述した。その結果、枠文(キャリアセンテンス)を用いた発話実験データでは、1個人内であれば発声タイプの異なる3系列子音(平音、激音、濃音)の対立を保つのに有効と考えられる特徴が存在し、その現れ方の相対的な程度は、ソウル方言とは一部異なることが示唆されることを確認した。 4)先行研究で示されていた語彙アクセント表記とは異なる実現形もいくつか確認できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
COVID-19の影響により、2月~3月にかけて予定していた大邱、釜山での調査が中止となり、データ確保数が予定数に達していない。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度にあたる2020年度も秋以降まではCOVID-19の影響により現地調査は困難であると予測される。東京近郊在住の慶尚道方言話者を対象とした録音実験は、状況・環境が整い次第開始予定である。新たなデータ収集が十分に行えるようになるまでは、これまで蓄積してきたソウル方言データとの対照を先に進めることにし、対照の観点からの成果発表を準備する。また、先行研究と異なる語彙アクセントについて、共通的に観察される要因(たとえば子音の種類、音節構造など)について追加的に検討する。
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Causes of Carryover |
被験者への謝金、物品費(文具購入)が少なかったことによる。次年度に実験が再開された場合、当該年度の分を充当する。
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