2019 Fiscal Year Research-status Report
Reseach on Japanese accents based on dynamic tone styles
Project/Area Number |
19K00598
|
Research Institution | Tokyo University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
佐藤 大和 東京外国語大学, 大学院総合国際学研究院, 研究員 (50401550)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
益子 幸江 東京外国語大学, 大学院総合国際学研究院, 教授 (00212209)
峰岸 真琴 東京外国語大学, アジア・アフリカ言語文化研究所, 教授 (20183965)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 音調 / 日本語アクセント / 句音調 / 音調動態 / アクセント知覚 / リズム構造 |
Outline of Annual Research Achievements |
日本語アクセントの音調動態は、より長い発話のまとまりの音調(句音調)との関連を考慮にいれて分析する必要性が認識されたところから、女性2名、男性1名の自発発話音声のピッチ周波数を抽出し、句音調の特性、アクセント音調の音韻区分との関連等に関して分析した。得られた結果の要点は以下のとおりである。(1)句音調は、句全体に渡って漸次的に下降するピッチ特性の上に、アクセント固有のピッチ成分が重畳するという従来のモデルでは必ずしも記述できない。自発発話における句音調は、ピッチの大きな上昇を伴う卓立型音調様式と、メリハリのない単調な発話に見られる非卓立型音調様式とがあり、前者が自発発話では典型的な音調様式となる。(2)句のアクセント位置がアクセント拍上にない現象はしばしば観測されるが、このようなアクセントの動的振舞は、音調の制御が音節の開始点ではなく、音節内母音の開始点近傍に同期して開始されることが明らかとなり、いわゆるアクセントの「遅下がり」現象を説明する重要な要因であることが示された。(3)上記の分析結果に基づき、アクセント句の音調動態を分析するにあたって、アクセントの動体核を原則2拍からなる単位とし、またアクセント句を、(上昇部-動態核-アクセント単位の終結下降部-句の終結下降部)等からなる動的音調構造として捉える必要性を示した。 また、日本語アクセント動態を理解するための比較対照研究として、東南アジア諸語の声調の分析研究を進めた。タイ語の場合には、日本語と比べ、音調句におけるピッチの卓立による音声的強調に基づくよりは、語順の変更や強調・焦点化を表す語句の付加など、統語的手段による卓立表現が優位であること、また東南アジア諸語の声調分析の比較分析から、それぞれの言語の声調における型の対立は、音調特性における有標/無標の諸特徴に基づいた体系をなすことなどが示された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
日本語アクセントの動態形式に関して、当年度は自発発話音声を用いた音調分析の研究から開始し、データを集積するとともに一定の成果を得、ほぼ順調に進展している。日本語のリズム構造とアクセントの関連については、分析および知覚実験のための言語リストの作成に向けて基本検討を行ったが、本格的検討は次年度となる。また、日本語アクセントの理論的考察に寄与するための対照研究として、アジア諸語の声調について、音響音声学的研究を推進した。 当年度は、新型コロナ・ウィルスの影響で、後半部に十分な自由ディスカッションの場を設けられなかったのは残念であり、今後の研究の進め方の課題である。
|
Strategy for Future Research Activity |
・これまで進めてきた自発発話音声の音調分析の被験者を1~2名増加して分析データの拡充を図るとともに、特にアクセント動態核の音調形式および音節構造(リズム構造)とアクセント型との関係に着目した分析研究を進める。 ・日本語のリズム構造とアクセントの関係を研究するための語リスト(100~200語程度)の作成を行う。これに基づき音声データを収録し、両者の関係を明らかにするための音響分析を行うとともに、音声データを用いた知覚実験の準備を進める。 ・主に東南アジアの諸言語における声調とリズムを、日本語の音調動態との比較・対照の観点から分析を行い、日本語アクセント現象の理解に役立てる。
|