2019 Fiscal Year Research-status Report
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19K00599
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Research Institution | Tokyo National University of Fine Arts and Music |
Principal Investigator |
磯部 美和 東京藝術大学, 学内共同利用施設等, 准教授 (00449018)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岡部 玲子 専修大学, 文学部, 教授 (60512358)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 言語獲得 / 日本語 / 非顕在的要素 / 生成文法 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、日本語を母語とする幼児(日本語児)が、音形に表れない要素をどのように理解するかを、実験の実施を通して調査し、それによって得られる実証的なデータに基づいて、言語獲得理論と生得的言語知識を司る言語機能のモデル構築に貢献することを目的とする。 本年度は、日本語のVerb-Echo Answer(VEA)文に関する先行研究を検討し、それを基に日本語児に対して実験を実施した。また、その成果を国際学会(GALA14)で口頭発表し、論文にまとめた。日本語のVEA文とは、「昨日誰かがここに来たの」という問いに対して、「はい・いいえ」のような応答表現ではなく「来たよ」「来なかったよ」のように疑問文に含まれる動詞を用いて返答する文のことを指す。この例では「来たよ」は「誰かがここに来たよ」と解釈され、VEA文の空項は空代名詞proである可能性がある。しかし、「来なかったよ」の場合は「誰かが来なかったよ」ではなく「誰も来なかったよ」と解釈され、否定辞は不定代名詞の作用域外にあると考えられる。この解釈は空項がproであるという分析では説明不可能であり、統語研究では、VEA文の空項は、動詞がVからCへ語順変化を伴わずに主要部移動し、主語を含むTPが音声的に削除されたことにより生じると分析されている。ここで、VEA文「来なかったよ」の空項は、先行の疑問文の主語とは異なり、「誰も」と解釈しなければいけないことを、子どもがどのように獲得するのかという問いが生じる。そこで、5歳前後の日本語児による、「誰か」と否定辞を含む疑問文に対するVEA文と、対応する平叙文の解釈を調査した。その結果、幼児がこれらの文を大人と同様に解釈することを示唆するデータが得られた。 また、翌年度に実施予定の、VEA文理解に関する追実験と語彙的緊密性に関する獲得実験の準備も併せて行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(1) 日本語のVEA文に関する文献を調査した上で実験を実施し、その成果を国際学会において発表し、論文を論文集に投稿した。 (2) VEA文理解に関する追実験と語彙的緊密性に関する獲得実験の準備を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度までの成果に基づき、幼児を対象とする実験を行う。また、引き続き先行研究を幅広く調査し、日本語と日本語以外の言語における非顕在要素の比較と獲得データとの関連を検証する。その結果を国内外の学会で発表する。言語獲得理論および言語機能理論の構築に貢献する論文の発表を目指す。 なお、本研究は保育園等で幼児を対象とした実験を行う必要があるが、新型コロナウィルス感染症の感染状況により、令和2年度に予定している実験が実施できない場合は、実施を令和3年度に延期するか、従来とは異なる方法でのデータ収集を検討する。
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Causes of Carryover |
本年度末に保育園において幼児を対象とした実験を実施する予定だったが、新型コロナウィルス感染症の感染拡大により、これを見合わせた。次年度、感染症の収束後、実験を実施する際に必要となる物品の購入費として使用する。
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Research Products
(1 results)