2021 Fiscal Year Research-status Report
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19K00600
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
安藤 智子 富山大学, 学術研究部人文科学系, 准教授 (00345547)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 方言 / 岐阜県 / 韻律 / 文法 |
Outline of Annual Research Achievements |
当該年度には、COVID-19の感染拡大の影響から当初の計画を変更し、収集済みの音声データの整理を進めつつ、新たにオンラインでの調査を活用した文法研究に着手した。具体的には、岐阜県方言の原因・理由を表す接続助詞として優勢な「デ」のほかに散見される「ニ」を取りあげ、現在の東濃地方における許容度と使用条件を分析した。 先行研究からは、文脈に依存して多義的な性質を持つ「ニ」について、接続助詞としては共通語の「~のに」に相当する逆接に加えて、「~から、ので」に相当する原因・理由を表す順接用法があることが指摘されているが、先行研究における岐阜県内での調査では相当程度衰退しているように見受けられた。 本研究では、東濃地方の方言話者を対象とし、主節が命令・依頼などの働きかけのモダリティ形式を持つ場合に条件を限定し、その働きかけの根拠を示す従属節に用いられる順接の「ニ」について、話者の属性、主節のモダリティ形式の種類、主節の肯定形/否定形の差、聞き手にとっての従属節の内容の把握状況が、許容度に関わるか否かを検討した。 オンラインアンケートによる調査の結果、次の結論を得た。①話者の属性については、男女差や東濃内部での明確な地域差は見らない一方で、年代別にみると、中年層よりは高齢層において「ニ」の許容度が高い。②モダリティ形式上の働きかけの程度が強いほど、「ニ」の許容度が高くなる傾向ある。③主節の肯定/否定による明確な影響は認められない。④聞き手がすでに従属節の内容を把握している場合に、把握していない場合に比べて「ニ」の強度が高い傾向がある。ただし、話し手が聞き手の健康などを案じて注意喚起する内容の場合には、聞き手が把握しているか否かに関わらず許容度が高い傾向がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
COVID-19の感染拡大により、高齢者の多い地域での音声の録音を伴う対面調査をおこなうことが困難な状況が続いている。このため、計画していた調査をおこなう代わりに、これまでに録音した資料についての別の角度からの分析や、オンラインで実施可能な調査を試みた。こうした試行錯誤に時間を要し、当初の計画を変更したため、予定よりやや遅れる事態となった。
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Strategy for Future Research Activity |
COVID-19への対応が進んできたことにより、調査の再開が見込めるようになっていると考える。延長された研究期間を活用し、基本的な感染対策をおこなったうえで、調査対象の世代と地域を拡大した方言音声データの収集とその整理をおこなっていく予定である。年度末にはその結果を論文にまとめる計画である。
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Causes of Carryover |
COVID-19の感染拡大により、当初計画していた対面調査をおこなうことができなかったことにより、研究期間の延長を申請し、承認された。延長された期間には、当初計画していた対面調査により音声データの収集を行うための調査旅費を使用する計画である。
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Research Products
(3 results)