2020 Fiscal Year Research-status Report
A comparative study of the syntax of aspectual auxiliary verbs
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19K00601
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
松岡 幹就 三重大学, 人文学部, 准教授 (80345701)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 進行文 / 否定辞 / 存在動詞 / 有生名詞 / 無生名詞 / 単文構造 / 複文構造 / 日本語 |
Outline of Annual Research Achievements |
日本語の動名詞化接辞「て」を伴った動詞と存在動詞「いる」が複合されてできる「ている」形進行文において、主語が有生名詞か無生名詞かによって、文否定辞の「ない」が現れる位置に違いがあることが先行研究で指摘されている。有生名詞の場合は、「ない」が「て」の前の動詞に付加することも、また「いる」に付加することもできる(a. 子ども達が遊ばないでいる。b. 子ども達が遊んでいない。)。一方、主語が無生名詞の場合には、「ない」が「て」の前の動詞に付加することはできず、「いる」に付加しなければならない(a. * 雨が降らないでいる。b. 雨が降っていない。(「*」は、非文法的な文であることを示す))。本研究は、有生名詞主語と無生名詞主語の「ている」形進行文の間に見られるこの違いを、Matsuoka (2019) が提案する「ている」進行文の統語構造に基づいて説明することを試みている。 Matsuoka は、有生名詞を主語とする「ている」進行文は、「いる」を存在の主動詞とする主節の中に動名詞節が埋め込まれた複文構造を持つことも、あるいは「いる」が進行相を表す助動詞として機能する単文構造を持つこともできると主張している。一方、無生名詞を主語とする「ている」進行文は、単文構造しか持ち得ないと論じている。この違いについてMatsuoka は、主動詞としての「いる」が有生名詞のみを主語として選択するためだと述べている。 Matsuokaの分析を踏まえれば、有生名詞を主語とする「ている」進行文では、主節と動名詞節のどちらにも否定辞が含まれることができ、「ない」が2カ所に現れることが説明される。一方、無生名詞を主語とする「ている」進行文では、唯一の節である主節にしか否定辞が出る位置はなく、「ない」が1か所にしか現れないことが正しく予測される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究開始時の構想を補強する論文を刊行することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
完了相を表す補助動詞について分析し、論文にまとめる。
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Causes of Carryover |
残った金額が少なかったため、次年度に回した方が有効に利用できると判断した。次年度に図書を購入する費用に充てる計画である。
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