2021 Fiscal Year Annual Research Report
A comparative study of the syntax of aspectual auxiliary verbs
Project/Area Number |
19K00601
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
松岡 幹就 三重大学, 人文学部, 教授 (80345701)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 進行文 / 完了文 / 補助動詞 / 統語構造 / 日本語 / バスク語 / ゲルマン語 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、日本語の動名詞化接辞「て」を伴った動詞と補助動詞「いる」または「ある」が複合されてできる「ている」進行文、「ている」および「てある」完了文について、比較統語論の観点から分析を行った。主に補助事業期間の初年度と翌年度に進行文について、また最終年度に完了文について考察した。 まず「ている」進行文の構造については、先行研究で提案されている、バスク語の進行文の構造の二分類に対応する2つのタイプがあるとする分析を発表した。一方のタイプでは、「いる」が存在の主動詞であり、文の主語が存在する事物を、また接辞「て」が付いて名詞化された節が(音形を持たない後置詞を伴うことによって)場所を表すという、二重節の存在文の構造を持つ。もう一方のタイプは、「いる」が進行相を表す助動詞として現れる単一節構造を持つ。その上で、有生名詞を主語とする「ている」進行文(例:太郎が 本を 読んでいる。)はどちらのタイプの構造も持ち得るが、無生名詞を主語とするもの(例:風が 木の葉を 揺らしている。)は、当該名詞が存在動詞としての「いる」の主語になり得ないために、「いる」が助動詞となる単一節構造を持つと主張している。さらに、この分析に基づいて、「ている」進行文における数量副詞の特殊な解釈や文否定辞の位置などが説明されることを論じた。 一方、「ている」および「てある」完了文については、どちらも結果の意味を表すことができるという点では共通しているが、「ている」の方は経験の意味も持ち得るのに対し、「てある」の方はそのような解釈を持たないということを観察した。同じ区別が近代以前の英語や現代のノルウェー語のhave完了文とbe完了文の間にも見られるということを指摘し、日本語の「いる」と一部のゲルマン語のhave動詞、日本語の「ある」とそれらゲルマン語のbe動詞が同じ性質を持つ可能性があることを論じた。
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